「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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36.禁じられし魔法

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「それでルナーラ様、このメイドと御者はどうするのですか?」
「え? ああ、それはあまり考えていませんでしたね……」
「息はあるようですね……」

 ルナーラ様が王位を継ぐという話を受け流して、ラベルグ様は周囲に寝転がっている人達に触れてきた。
 遠目から見たら生きていたかどうかわからなかったが、どうやら無事であるようだ。それはなんというか、安心していいのかどうかは微妙な所である。この二人は、ルナーラ様がやったことの証人だ。大丈夫なのだろうか。

「この二人にはばれないように襲いましたが、余計なことを喋られたら困りますから、対策する必要はあるでしょうね……」
「対策……何か物騒なことでもするつもりですか?」
「いいえ、物騒なんてそんなことはしませんよ。そうですね、せん――いいえ、少しばかりわかってもらいますか」
「……?」

 ルナーラ様の言葉に、ラベルグ様は怪訝な顔をした。
 彼は、魔法のことについてはそこまで詳しくはない。ルナーラ様が何を言っているのか、よくわからないのだろう。
 ただ私には何を言っているのかが理解できた。恐らくルナーラ様は、精神に干渉するつもりなのだ。

「ルナーラ様、精神に干渉される魔法は国際法でも禁じられているのではありませんか?」
「え? ああ、そういえばそうでしたね」
「……ルナーラ様、それは本当ですか?」

 私の言葉に、ラベルグ様は強く反応していた。
 真面目な騎士である彼は、そういったことには敏感であるらしい。その目が鋭く、ルナーラ様の方を捉えている。

「ええ、本当ですよ。禁止されています。精神に干渉する魔法は非道なものだとされていますからね……ですが仕方ありません。この二人に余計なことを喋らせないためには、そうするか命を奪うかだけです」
「……そうですね。命を奪うよりはマシですか」

 ルナーラ様の説明を聞いて、ラベルグ様はため息をついた。
 この状況では、それに頼るしかないと結論を出したのだろう。彼の悩みは、一瞬のものだったといえる。
 それを引き越してしまったことは、申し訳ない。ただ私としても、それに触れない訳にはいかなかったのだ。

「ルナーラ様、そういうことならせめて一人は私に任せていただけませんか? 今回のような場合は、個々に魔法をかけるのでしょう? それなら分担した方が良いはずです」
「そうですね……それなら、メイドの方をお願いできますか? 彼女はニルーアに近かった。事情も色々と知っていた。記憶に蓋をするの難しいでしょうから。お願いします」
「ええ、任せてください」

 精神に干渉する魔法は、そもそも簡単なものではない。
 今回のような場合では分担しておいた方がいいだろう。そう思って私は進言したのだ。
 魔法の是非に関しては、今は考えていない。これはこの国のために行うことだ。私はそう思っているため、その気持ちに従うことにする。
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