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30.一瞬の出来事(モブside)
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「ルナーラ、何をしたぁっ!」
「お前、ドルガスを……弟に魔法を使ったのか!」
突然のことに呆気に取られていたディオート王と第一王子ダルケンは、ルナーラに対して激昂した。
息子あるいは弟を失った二人の怒りが、ルナーラに向けられる。だが彼女は、それを受け流していた。彼女にとって、最早伯父やいとこの命は邪魔なものでしかなかったからだ。
「王位を譲っていただけないようですからね。こちらも強引な手を取らざるを得ません」
「このっ……」
「ダルケン、待て!」
制止する国王の言葉も聞かずに、ダルケンはルナーラに駆け寄って行った。
それは弟を燃やし尽くした彼女に対して、怒りに任せて行動をした結果だろう。
ただ、その判断は誤りだったとしか言いようがない。ドルガスを一瞬で燃やし尽くした者に、真正面から向かって行ったらどうなるかは、明らかだからだ。
「お前だけは許さ――あっ!」
ダルケンがルナーラの元に辿り着くことはなかった。
彼は近づいた瞬間に炎に包まれた。しかし走り出した勢いは収まることもなく、そのまま消し炭になっていったのだ。
それをルナーラは、特に表情も変えず、さらには動かず見守っていた。彼女にとって、それはそれ程難しい程ではなかったのである。
「うう、ああっ……」
一瞬の出来事で息子二人を失ったディオート王は、力なくうめき声を出すことしかできなかった。
そんなディオート王に対して、ルナーラは手を向ける。今の彼女には、慈悲や情けなんてものはなかった。彼女はただその役割と全うするだけだ。
「ああ伯父様、一つ言っておかなければならないことがありますね……あなたがお爺様の遺言書を書き換えたことを、お父様は知っていましたよ」
「……何?」
「時期国王に選ばれていたのは、お父様だったそうではありませんか。今となっては、それを見過ごしたことをお父様も後悔していますよ」
「そんな、馬鹿な……」
目を丸めて驚いた後、ディオート王は火に包まれた。
それを見ながらルナーラは、目を細めていた。全ての間違いは、ディオート王が王を継ぎ、その一族がこの国を支配したことだったといえる。そう考えながら、ルナーラはもっと早くこうするべきだったと後悔していた。その分だけ民を苦しめたことを、ルナーラは悔いていたのだ。
「……感傷に浸っている場合ではないわね」
しかしながらルナーラの仕事は、まだ終わっているという訳ではなかった。
三人が亡くなった今、次期王位継承筆頭はニルーアということになる。彼女が王位を自分に譲ることはないと、ルナーラは確信していた。故に彼女も、葬り去らなければならなかったのだ。
それを実行することに対して、迷いなどはなかった。ルナーラは燃え尽きた三人を一瞥することもなく、玉座の間を後にした。
「お前、ドルガスを……弟に魔法を使ったのか!」
突然のことに呆気に取られていたディオート王と第一王子ダルケンは、ルナーラに対して激昂した。
息子あるいは弟を失った二人の怒りが、ルナーラに向けられる。だが彼女は、それを受け流していた。彼女にとって、最早伯父やいとこの命は邪魔なものでしかなかったからだ。
「王位を譲っていただけないようですからね。こちらも強引な手を取らざるを得ません」
「このっ……」
「ダルケン、待て!」
制止する国王の言葉も聞かずに、ダルケンはルナーラに駆け寄って行った。
それは弟を燃やし尽くした彼女に対して、怒りに任せて行動をした結果だろう。
ただ、その判断は誤りだったとしか言いようがない。ドルガスを一瞬で燃やし尽くした者に、真正面から向かって行ったらどうなるかは、明らかだからだ。
「お前だけは許さ――あっ!」
ダルケンがルナーラの元に辿り着くことはなかった。
彼は近づいた瞬間に炎に包まれた。しかし走り出した勢いは収まることもなく、そのまま消し炭になっていったのだ。
それをルナーラは、特に表情も変えず、さらには動かず見守っていた。彼女にとって、それはそれ程難しい程ではなかったのである。
「うう、ああっ……」
一瞬の出来事で息子二人を失ったディオート王は、力なくうめき声を出すことしかできなかった。
そんなディオート王に対して、ルナーラは手を向ける。今の彼女には、慈悲や情けなんてものはなかった。彼女はただその役割と全うするだけだ。
「ああ伯父様、一つ言っておかなければならないことがありますね……あなたがお爺様の遺言書を書き換えたことを、お父様は知っていましたよ」
「……何?」
「時期国王に選ばれていたのは、お父様だったそうではありませんか。今となっては、それを見過ごしたことをお父様も後悔していますよ」
「そんな、馬鹿な……」
目を丸めて驚いた後、ディオート王は火に包まれた。
それを見ながらルナーラは、目を細めていた。全ての間違いは、ディオート王が王を継ぎ、その一族がこの国を支配したことだったといえる。そう考えながら、ルナーラはもっと早くこうするべきだったと後悔していた。その分だけ民を苦しめたことを、ルナーラは悔いていたのだ。
「……感傷に浸っている場合ではないわね」
しかしながらルナーラの仕事は、まだ終わっているという訳ではなかった。
三人が亡くなった今、次期王位継承筆頭はニルーアということになる。彼女が王位を自分に譲ることはないと、ルナーラは確信していた。故に彼女も、葬り去らなければならなかったのだ。
それを実行することに対して、迷いなどはなかった。ルナーラは燃え尽きた三人を一瞥することもなく、玉座の間を後にした。
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