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14.嘲笑う王女

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 結局の所、正当な報酬がもらえると思っていた私が馬鹿だったのかもしれない。
 王城での扱いで、そのようなことはないとわかるはずだった。それに気付けなかったのは、私も目先にあったお金に惑わされていたということなのだろう。
 それを悟った私は、改めてニルーア様のことを見ていた。彼女は、その顔を醜悪に歪めている。私が傷ついているのを見て、かなり喜んでいるようだ。

「いい気味ですね。聖女に就任して、調子に乗っていたあなたには良い薬でしょう? これに懲りて、身の程を弁えることですね。そうすれば私だって、それなりに良く扱ってあげますよ」

 ニルーア様は、楽しそうに言葉を発していた。
 その言葉は、私の認識と大いにずれている。私がいつ、調子に乗ったというのだろうか。
 いや、そうだと言えばそうなのかもしれない。私は聖女に選ばれて浮かれていた。それは反省するべき事柄だ。

 身の程弁えるということなのかどうかはわからないが、私には聖女という地位は必要がないものだったのだろう。
 今になって、それがわかった。貴族や王族などと、深く関わるのは良くない。彼らは私達平民のことを見下して、道具としか思っていないのだから。

 ルナーラ様やラベルグ様、それにルナメリア様は違った。
 しかしそれは、ドルメア公爵家の人々が変わっているというだけだ。このディオート王国ではむしろ、ニルーア様のような方が上に立ち者としては一般的なのである。

「……やめさせてもらいます」
「え?」
「聖女をやめさせてもらいます。これ以上あなたには付き合いきれません」

 私の言葉に、ニルーア様は呆気に取られているようだった。
 だが彼女は、すぐに笑みを浮かべる。それはとても、嬉しそうな笑みだ。

「あははっ! やっとわかったのですね? あなたがどういった選択をするべきかが」
「……ええ、そうかもしれませんね」
「こちらとしては、もちろん歓迎しますよ。この王城から、ゴミを一つ排除できるのですからね。ああでも、今日やめるのならその給料も払いませんからね?」
「お好きにどうぞ」

 私は、ニルーア様に背を向けた。
 これ以上彼女と話を続けていても、得られる者など何もない。さっさとここから出て行き、故郷に帰るとしよう。

「……言っておきますけれど、あなたの扱いなんてものを世間に言いふらさないでくださいね」
「……はい?」
「そんなことをしたら、どうなるかわかっていますよね? この国で生きていけなくなりますよ」
「……」

 ニルーア様は、私に対して脅しの言葉を口にしてきた。
 流石に私の扱いが、世間に広まったらまずいとは思っているようだ。それはなんとも、馬鹿げた話である。別に私は、広めようとも思っていなかったけれど。
 ただ気になったのは、彼女のその態度であった。その権力によって、私のことを抑え込める。その勘違いだけは、正しておかなければならないだろう。
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