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1.無事にエンディングを迎えられて
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魔法学園の卒業式が粛々と終わり、堅苦しい式典から一転、卒業生達は卒業パーティーの会場で賑わっている。
そんな中、私はただ一人黙々と食事をしているだけだ。その理由は単純で、話す相手がいないからである。
「アルメリア、踊ろう」
「はい、エクティス様……」
私の目に入ってきたのは、卒業生の中でも一際目立つ二人組だった。
きっと誰が見ても、あの二人は特別であるとわかるはずだ。周囲にいる多くの者達と、あの二人は少々毛色が違う。
その理由を知っているのは、きっと私だけだろう。私は、この世界の人々から知らないあることを知っているのだ。
「改めて考えても、不思議なものね……」
この世界は、ある乙女ゲームの世界である。ここで暮らしている者達は確かに生きている人間ではあるのだが、それでも私が知っているゲームの登場人物達とそっくりなのだ。
それを私が初めて理解したのは、五歳くらいの時だっただろうか。ある時突然私は思い出したのだ。前世の記憶を。
「ラナトゥーリ・ウェルリグル侯爵令嬢……まさか、私が悪役令嬢になるなんて」
不慮の事故で亡くなった私は、乙女ゲームの世界に転生した。私は、そのように解釈している。
違う世界とはいえ、二度目の人生を送ることができるというのは嬉しいことだといえるだろう。ただ、私には少しだけ懸念があった。私はどう考えても、乙女ゲームにおいて悪役だった人物に転生していたからだ。
「ラナトゥーリ……エクティスに好意を寄せており、アルメリアの邪魔をする令嬢。あらゆるルートでその悪行を暴かれて裁かれる正に悪役としかいえない女性。そんな人に転生するなんて、私は運がいいのか悪いのか……」
ラナトゥーリ・ウェルリグルは、ゲームにおいて悲惨な末路を迎える。それは自業自得ではあるのだが、私にはとても気掛かりだった。
初めの頃は別に悪行を重ねなければ問題はないとも思っていた。ただ、それでは甘かったのだ。いつ頃からか、私はそれを理解した。
この世界には、因果のようなものが渦巻いている。色々な流れが、私をバッドエンドに向かわせようとしていたのだ。
「なんとも不思議なことではあるけれど……私が何かすると決まって不幸が起きた。ゲームで語られていたラナトゥーリの幼少期のエピソードが起こってしまった」
私が善意で行った行為は、周りに回ってゲームのエピソードに繋がった。それによって、私は理解することになった。私の人生が、一筋縄ではいかないということを。
だから、私は今までずっと心掛けてきた。なるべく大人しく生きていくことを。
人とあまり関わらず特異なことはしない。善意も悪意も持たずに静かに暮らす。それを心掛けて、私は生きてきたのだ。
「まあ、その結果としてこうして無事に卒業できるのだから、よかったとしか言いようがないわね……」
結果的に、私はゲームのエンディングの先まで無事に辿り着くことができた。
本来であれば、この時点でラナトゥーリは断罪されている。それがなかったということは、私は助かったということなのだろう。
それ自体は、とても喜ばしいことだと思っている。ただ、何故だろうか。私の心には、ぽっかりと穴が開いているのだった。
そんな中、私はただ一人黙々と食事をしているだけだ。その理由は単純で、話す相手がいないからである。
「アルメリア、踊ろう」
「はい、エクティス様……」
私の目に入ってきたのは、卒業生の中でも一際目立つ二人組だった。
きっと誰が見ても、あの二人は特別であるとわかるはずだ。周囲にいる多くの者達と、あの二人は少々毛色が違う。
その理由を知っているのは、きっと私だけだろう。私は、この世界の人々から知らないあることを知っているのだ。
「改めて考えても、不思議なものね……」
この世界は、ある乙女ゲームの世界である。ここで暮らしている者達は確かに生きている人間ではあるのだが、それでも私が知っているゲームの登場人物達とそっくりなのだ。
それを私が初めて理解したのは、五歳くらいの時だっただろうか。ある時突然私は思い出したのだ。前世の記憶を。
「ラナトゥーリ・ウェルリグル侯爵令嬢……まさか、私が悪役令嬢になるなんて」
不慮の事故で亡くなった私は、乙女ゲームの世界に転生した。私は、そのように解釈している。
違う世界とはいえ、二度目の人生を送ることができるというのは嬉しいことだといえるだろう。ただ、私には少しだけ懸念があった。私はどう考えても、乙女ゲームにおいて悪役だった人物に転生していたからだ。
「ラナトゥーリ……エクティスに好意を寄せており、アルメリアの邪魔をする令嬢。あらゆるルートでその悪行を暴かれて裁かれる正に悪役としかいえない女性。そんな人に転生するなんて、私は運がいいのか悪いのか……」
ラナトゥーリ・ウェルリグルは、ゲームにおいて悲惨な末路を迎える。それは自業自得ではあるのだが、私にはとても気掛かりだった。
初めの頃は別に悪行を重ねなければ問題はないとも思っていた。ただ、それでは甘かったのだ。いつ頃からか、私はそれを理解した。
この世界には、因果のようなものが渦巻いている。色々な流れが、私をバッドエンドに向かわせようとしていたのだ。
「なんとも不思議なことではあるけれど……私が何かすると決まって不幸が起きた。ゲームで語られていたラナトゥーリの幼少期のエピソードが起こってしまった」
私が善意で行った行為は、周りに回ってゲームのエピソードに繋がった。それによって、私は理解することになった。私の人生が、一筋縄ではいかないということを。
だから、私は今までずっと心掛けてきた。なるべく大人しく生きていくことを。
人とあまり関わらず特異なことはしない。善意も悪意も持たずに静かに暮らす。それを心掛けて、私は生きてきたのだ。
「まあ、その結果としてこうして無事に卒業できるのだから、よかったとしか言いようがないわね……」
結果的に、私はゲームのエンディングの先まで無事に辿り着くことができた。
本来であれば、この時点でラナトゥーリは断罪されている。それがなかったということは、私は助かったということなのだろう。
それ自体は、とても喜ばしいことだと思っている。ただ、何故だろうか。私の心には、ぽっかりと穴が開いているのだった。
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