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23.決まったこと

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「聖女?」
「ええ、聖女です」

 私の言葉に、アドルヴ殿下はいつもの爽やかな笑みを見せてきた。
 彼から聞かされたことは、驚くべきことであった。リルルナが、この国に関する魔法を統率する役割を担う。それは、とんでもないことだ。
 聖女と呼ばれるその役職は、多大なる権力を持つ。本当にそんな役職が許されるのだろうか。反対など起こらないのか、少々心配である。

「ラルリア嬢、心配なのはわかります。しかし実の所、既に権力者達からは指示を得られているのです」
「え?」

 不安そうな顔をしていたからか、第二王子のイーヴェル殿下が言葉を発した。
 その内容に、私は少し面食らっている。既に根回しをしているなんて、驚きだ。ということは、これは前々から決まっていたことなのだろうか。

「お姉様には秘密にしていましたが、これでも色々と水面下で動いていたのです。まあ話がついたのはつい先程であるようですが……」
「リルルナの力に関して、利用する方が自分達にとっても得になると権力者達は判断したようですね……」
「私としては、少々不本意ではありますが、まあ良いでしょう。聖女という地位になれば、お父様も身を固めろとうるさくしなくなるかもしれません」

 リルルナとアドルヴ殿下は、二人で何か分かり合っているようだ。
 二人の仲は良くないのではないかと最近思い悩んでいたが、それは杞憂だったのかもしれない。それ程に二人の息はぴったりだった。

「とはいえ、まだ正式に発表できるという段階でもない。これから何かが起こってひっくり返ることもあるかもしれません。ラルリア嬢、あなたがそのようなことをすることなどはないと思っているが、くれぐれもよろしくお願いします」
「あ、はい。それはもちろんです」

 二人の仲の良さに喜んでいると、イーヴェル殿下が鋭い意見を出してきた。
 もちろん、私も誰かに言いふらすつもりなんてなかった。ただ、それを改めて言ってもらえたことはありがたい。改めて気を引き締めることができる。

「まあ、この段階で覆るなんてそうありませんから、安心して良いと思いますけれどね」
「ええ、その通りです。我々の完璧な計画は揺るぎませんよ」

 何故かわからないが、リルルナとアドルヴ殿下は自信満々だった。話がまとまったと、心から思っているということだろうか。
 それは危険なような気もする。私も今更覆ることはないとは思っているものの、色々と気にしておく必要はあるのではないだろうか。
 とはいえ、リルルナがこの国の上に立つということは心強いものである。彼女ならきっと、この国を良くしてくれるだろう。
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