王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗

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20.一つの作戦(モブside)

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「布教だ……布教するしかない! ラルリアの素晴らしさというものをこのレジエート王国に布教しよう。本でも出せばいい」
「お姉様は、そんな風に目立つことを望んではいませんよ。知らないんですか?」
「それなら、君の悪評を流せというのか? 僕は君のことが好きではないが、それは流石に気が引ける」
「私は別に構いません。別に今でも、あることないこと言われていますからね。それが増えた所でなんとも思いませんよ」

 イーヴェルが考えると、兄といとこが話を始めていた。
 ラルリアの評価を上げる。リルルナの評価を下げる。それも一つの方法であると、イーヴェルは思っていた。

 ただ、前者が成功するのは難しい。ラルリアの評価が根付いているからだ。
 後者については、単純に良いものであるとは言い難い。リルルナの評価を、わざわざ下げる必要などはないからだ。

「……兄上、リルルナ嬢、そのどちらの方式も主軸として考えるのは無理があります。前者については、実行しても良いとは思いますが、大々的にではなく噂を流すくらいに留めておくべきです」
「イーヴェル、しかし他の方法などあるだろうか?」
「……逆に考えましょう。リルルナ嬢の評価をさらに上げるのです」
「……なるほど、そういうことですか」

 イーヴェルの言葉に、リルルナがゆっくりと頷いた。
 少し遅れて、アドルヴも目を見開く。イーヴェルが何を考えているかは、二人にもすぐに伝わったようだ。

「リルルナの権力を高めることによって、それがまとまることを恐れさせるという訳か」
「それもありますが、単純にリルルナ嬢に王妃が務まらない程の役職を与えさせるべきです。リルルナ嬢なら、この国を発展させられる人です。王妃であるよりも重要なことだと、貴族達に認識させましょう」
「それはそれ程難しいことではありませんね。というか元々、機が熟したらそうしようとさえ思っていました」

 イーヴェルの提案に、二人は乗り気であった。
 その方法であるならば、無駄にリルルナの評価を下げることはない。それは何よりも重要なことである。彼女の存在は、王家及びバレリア公爵家にとって利益となるからだ。
 この方法であるならば、むしろそのリルルナの立場を盤石にすることができる。特にデメリットがない方法だ。

「問題は、どれだけ効果があるかということではありますが……」
「まあその辺りは、どの作戦にもいえることだ。とにかくやってみるしかないだろう」
「まあ、そうですね……」

 三人は頷き合って、これからのことを決めた。
 こうして三人は、それぞれの行動を開始するのだった。
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