王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗

文字の大きさ
9 / 24

9.単純な理由

しおりを挟む
「なるほど、あなたの意見はよくわかりました」

 私の話に静かに耳を傾けていたアドルヴ殿下は、いつもとは違い少し真剣な顔をしていた。
 いつでも涼しい笑顔を絶やさない彼が表情を変えたということは、私の言葉を聞き入れて、しっかりと受け止めてくれたということだろう。
 これでアドルヴ殿下は、考えを改めてくれたはずだ。彼が働きかけてくれれば、伯父様だって説得できるだろう。これでこの婚約は、正しい形となるはずだ。

「しかしながら、この婚約を覆す理由にはなりませんね」
「え?」

 アドルヴ殿下から返って来た意外な返答に、私は思わず変な声を出してしまった。
 彼は、ゆっくりと首を振っている。どうやらリルルナが相手という案には何か不服があるようだ。彼女の方が、絶対に都合が良いと思うのだが。

「どうしてなのか、聞いてもよろしいでしょうか?」
「単純な話です。僕とリルルナは相性が悪い」
「相性が悪い?」

 アドルヴ殿下の口から出た言葉に、私は少し驚いた。
 相性が悪いなんて、そんな理由が出て来るなんて思っていなかったからだ。
 二人の仲は、悪いものではないと認識している。顔を合わせれば普通に話していたし、険悪な仲などではなかったはずなのだが。

「二人の仲は悪かったでしょうか?」
「いえ、別に仲が悪いなんてことはありませんよ。相性が悪いのです」
「……意見や思想に関して、正反対とかなんですか?」
「ええ、まあ、そんな所でしょうかね……」

 私の言葉に対して、アドルヴ殿下は少し言葉を濁していた。
 敢えて言葉にしたいようなことでもないだろうし、それは仕方ないことなのかもしれない。しかし、二人の間にそのような対立があったとは意外である。
 その辺りに関しては、二人きりの時に話しているのだろうか。少なくとも私は、そのような話は聞いたことがない。

 ただ彼がそう言っているのだから、それは信じることにしよう。別に疑う理由もない訳だし。
 それを踏まえて、彼とリルルナとの婚約を改めて考えてみる。すると私は、ある一つの結論を出すことになった。

「……仮にそうだとしても、やはりリルルナとの婚約する方が良いのではありませんか」
「うん?」
「嫌い合っている訳ではないのなら、意見の対立というのもむしろ必要だと思います。私とアドルヴ殿下の場合は、意見が偏るかもしれません。それが良いことであるかは微妙な所です。時には対立して意見を擦り合わせる方が有益なのではありませんか?」
「……」

 私は結局、アドルヴ殿下とリルルナの婚約は良いものではないかと思った。
 単純に仲が悪いのならば問題だが、意見の対立であるなら問題はないだろう。むしろそれは必要なことだ。意見を偏らせるよりも良い結論が出るようになるのではないだろうか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ
恋愛
 小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。  ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。 「あれ? きみ、誰?」  第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。

ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」  そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。  真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。 「…………ぷっ」  姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。  当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。  だが、真実は違っていて──。

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。  姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。  ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。

別れ話をしましょうか。

ふまさ
恋愛
 大好きな婚約者であるアールとのデート。けれど、デージーは楽しめない。そんな心の余裕などない。今日、アールから別れを告げられることを、知っていたから。  お芝居を見て、昼食もすませた。でも、アールはまだ別れ話を口にしない。  ──あなたは優しい。だからきっと、言えないのですね。わたしを哀しませてしまうから。わたしがあなたを愛していることを、知っているから。  でも。その優しさが、いまは辛い。  だからいっそ、わたしから告げてしまおう。 「お別れしましょう、アール様」  デージーの声は、少しだけ、震えていた。  この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります

恋愛
 妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。  せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。  普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……  唯一の味方は学友のシーナのみ。  アリーシャは幸せをつかめるのか。 ※小説家になろうにも投稿中

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

処理中です...