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9.単純な理由
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「なるほど、あなたの意見はよくわかりました」
私の話に静かに耳を傾けていたアドルヴ殿下は、いつもとは違い少し真剣な顔をしていた。
いつでも涼しい笑顔を絶やさない彼が表情を変えたということは、私の言葉を聞き入れて、しっかりと受け止めてくれたということだろう。
これでアドルヴ殿下は、考えを改めてくれたはずだ。彼が働きかけてくれれば、伯父様だって説得できるだろう。これでこの婚約は、正しい形となるはずだ。
「しかしながら、この婚約を覆す理由にはなりませんね」
「え?」
アドルヴ殿下から返って来た意外な返答に、私は思わず変な声を出してしまった。
彼は、ゆっくりと首を振っている。どうやらリルルナが相手という案には何か不服があるようだ。彼女の方が、絶対に都合が良いと思うのだが。
「どうしてなのか、聞いてもよろしいでしょうか?」
「単純な話です。僕とリルルナは相性が悪い」
「相性が悪い?」
アドルヴ殿下の口から出た言葉に、私は少し驚いた。
相性が悪いなんて、そんな理由が出て来るなんて思っていなかったからだ。
二人の仲は、悪いものではないと認識している。顔を合わせれば普通に話していたし、険悪な仲などではなかったはずなのだが。
「二人の仲は悪かったでしょうか?」
「いえ、別に仲が悪いなんてことはありませんよ。相性が悪いのです」
「……意見や思想に関して、正反対とかなんですか?」
「ええ、まあ、そんな所でしょうかね……」
私の言葉に対して、アドルヴ殿下は少し言葉を濁していた。
敢えて言葉にしたいようなことでもないだろうし、それは仕方ないことなのかもしれない。しかし、二人の間にそのような対立があったとは意外である。
その辺りに関しては、二人きりの時に話しているのだろうか。少なくとも私は、そのような話は聞いたことがない。
ただ彼がそう言っているのだから、それは信じることにしよう。別に疑う理由もない訳だし。
それを踏まえて、彼とリルルナとの婚約を改めて考えてみる。すると私は、ある一つの結論を出すことになった。
「……仮にそうだとしても、やはりリルルナとの婚約する方が良いのではありませんか」
「うん?」
「嫌い合っている訳ではないのなら、意見の対立というのもむしろ必要だと思います。私とアドルヴ殿下の場合は、意見が偏るかもしれません。それが良いことであるかは微妙な所です。時には対立して意見を擦り合わせる方が有益なのではありませんか?」
「……」
私は結局、アドルヴ殿下とリルルナの婚約は良いものではないかと思った。
単純に仲が悪いのならば問題だが、意見の対立であるなら問題はないだろう。むしろそれは必要なことだ。意見を偏らせるよりも良い結論が出るようになるのではないだろうか。
私の話に静かに耳を傾けていたアドルヴ殿下は、いつもとは違い少し真剣な顔をしていた。
いつでも涼しい笑顔を絶やさない彼が表情を変えたということは、私の言葉を聞き入れて、しっかりと受け止めてくれたということだろう。
これでアドルヴ殿下は、考えを改めてくれたはずだ。彼が働きかけてくれれば、伯父様だって説得できるだろう。これでこの婚約は、正しい形となるはずだ。
「しかしながら、この婚約を覆す理由にはなりませんね」
「え?」
アドルヴ殿下から返って来た意外な返答に、私は思わず変な声を出してしまった。
彼は、ゆっくりと首を振っている。どうやらリルルナが相手という案には何か不服があるようだ。彼女の方が、絶対に都合が良いと思うのだが。
「どうしてなのか、聞いてもよろしいでしょうか?」
「単純な話です。僕とリルルナは相性が悪い」
「相性が悪い?」
アドルヴ殿下の口から出た言葉に、私は少し驚いた。
相性が悪いなんて、そんな理由が出て来るなんて思っていなかったからだ。
二人の仲は、悪いものではないと認識している。顔を合わせれば普通に話していたし、険悪な仲などではなかったはずなのだが。
「二人の仲は悪かったでしょうか?」
「いえ、別に仲が悪いなんてことはありませんよ。相性が悪いのです」
「……意見や思想に関して、正反対とかなんですか?」
「ええ、まあ、そんな所でしょうかね……」
私の言葉に対して、アドルヴ殿下は少し言葉を濁していた。
敢えて言葉にしたいようなことでもないだろうし、それは仕方ないことなのかもしれない。しかし、二人の間にそのような対立があったとは意外である。
その辺りに関しては、二人きりの時に話しているのだろうか。少なくとも私は、そのような話は聞いたことがない。
ただ彼がそう言っているのだから、それは信じることにしよう。別に疑う理由もない訳だし。
それを踏まえて、彼とリルルナとの婚約を改めて考えてみる。すると私は、ある一つの結論を出すことになった。
「……仮にそうだとしても、やはりリルルナとの婚約する方が良いのではありませんか」
「うん?」
「嫌い合っている訳ではないのなら、意見の対立というのもむしろ必要だと思います。私とアドルヴ殿下の場合は、意見が偏るかもしれません。それが良いことであるかは微妙な所です。時には対立して意見を擦り合わせる方が有益なのではありませんか?」
「……」
私は結局、アドルヴ殿下とリルルナの婚約は良いものではないかと思った。
単純に仲が悪いのならば問題だが、意見の対立であるなら問題はないだろう。むしろそれは必要なことだ。意見を偏らせるよりも良い結論が出るようになるのではないだろうか。
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