王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗

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7.玉座の間にて

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 バレリア公爵家は、レジエート王国の国王の弟からなる一家である。
 二家の間の仲は良好だ。私も、伯父や伯母やいとことは仲良くさせてもらっている。
 だから、王城にも何度か訪ねたことはあった。しかしこうして、玉座の間にて応対してもらうのは思えば、初めてのことである。

 それは当然のことだ。親族である私は、こんな堅苦しい所でやり取りなんてしない。ここ政をする場だ。親族が顔を合わせる場所としては不適切である。
 逆に言えば、今回私は政に関係する案件でここに立っているということだ。今日ここで行われる話は、レジエート王国のこれからに関する大切な話なのである。

「ラルリア、久し振りだな。よく来てくれた」
「ええ、伯父様、お久し振りです」

 国王様――伯父様と会うのは、一か月振りくらいだろうか。関係が良好と言っても、頻繁に顔を合わせる訳ではない。特に国王様は忙しい身だ。アドルヴ殿下などに比べると、会う機会は少ないといえる。

「さて、今回お前に来てもらったのは他でもない。アドルヴとの婚約の件について話を進めたいからだ」
「えっと……」

 伯父様から話を切り出された私は、思わず言葉を詰まらせることになった。
 それは、事前に話を聞いていたことではある。ただ、私の理解は未だに追いついていない。その辺りについては、色々と聞いておきたい所だ。

「初めて聞いた時にもひどく驚きましたが……改めて聞かせてください、伯父様。本当に私とアドルヴ殿下を婚約させるつもりなのですか?」
「ああ、もちろんだ。ラルリアには次期王妃になってもらいたい」

 私の質問に対して、国王様は真っ直ぐに言葉を返してきた。 
 わかっていたことではあるが、どうやらこれは夢とか聞き間違いの類ではないようである。現実で起こっていることなのだ。私とアドルヴ殿下の婚約は。
 それは、色々と問題があるようなことであると思ってしまう。アドルヴ殿下の婚約者として、私は色々な面から考えて適切ではないのだ。

「ラルリア」
「あっ……」

 私がそんなことを考えていると、目の前に見知った顔が現れた。
 それは、アドルヴ殿下だ。彼はいつも通りの涼しい笑顔を、こちらに向けている。

「どうかこれからよろしくお願いします」
「え? あ、いや、その……こちらこそ、よろしくお願いします……」

 アドルヴ殿下の言葉に、私はたどたどしく答えることしかできなかった。
 色々と言いたいことはある。だがそれは、人目があるこの場で言うべきことではなさそうだ。後で国王様やアドルヴと直接話をした方が良いだろう。
 そう思って私は、とりあえずその場を切り抜けることにするのだった。
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