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6.戻って来ていた妹

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「え?」

 舞踏会に戻る気がなくなった私は、宿の部屋に戻って来た。
 するとそこには、見知った顔がいた。妹のリルルナが、ベッドに優雅に腰掛けていたのである。

「お姉様、お帰りなさいませ」
「え、あ、うん。ただいま……戻っていたんだね?」
「ええ、少し疲れてしまったので」

 リルルナは、結構な人とダンスを踊っていた。
 それはきっと、疲れることではあったはずだ。故に私が陰口の件でうだうだとしている間に、宿に戻って来たということだろうか。
 初めは驚いていた私だったが、段々と落ち着いてきた。まあ、別に舞踏会の会場にずっといる義務がある訳でもないし、特に問題はないだろう。

「所で聞きましたか? 舞踏会の会場で問題が起こったそうですよ?」
「問題?」
「ええ、なんでも男性が二人階段から転げ落ちたそうで……」
「それは、大変だね。でも、どうして階段から……」
「さて、それはわかりません。足でも滑らせたのではありませんか」

 リルルナの言葉に、私は少し混乱していた。
 舞踏会の会場にいた時には、そのような事件は発生していなかったはずである。つまり私が席を外している間に、事件の知らせが入ったということだろうか。

 しかし、そんな事件が起こっている時に会場から簡単に抜け出せるものではないはずだ。それなのにこの妹は、戻って来たということになる。
 明確に事故だったということだろうか。目撃者が多数いたなら、事件ではないので出入りも簡単なのかもしれない。
 ただそんな中でも抜け出すというのは心情的に難しいような気もする。いや、リルルナは性格上、そんなことは気にしないだろうか。

「ああ、魔法で会場の様子を観察していたんです。事件が発覚したのは、つい先程ですよ」
「魔法、なるほど、こんな所からでも見られるものなんだ……」
「まあ、私レベルになると、そのくらいはできますね」

 リルルナは、魔法についても秀でた才能を持っている。その能力によって、会場の様子を伺っていたようだ。それなら理解できない訳ではない。
 しかし、何故会場の様子なんて伺っているのだろうか。それがよくわからない。見ていて楽しいものでもないはずなのだが。
 もしかして、気になる人でもいるのだろうか。浮いた話であるならば、割と歓迎することはできる。この妹は、普段から結婚等に対して消極的であるから。

「お姉様も見てみますか?」
「ううん。私はいい。今日はもうお風呂に入って休もうと思っているから」
「そうですか……それなら私もご一緒しましょうか」
「あ、うん。空いているだろうしね」

 この宿には、大浴場があると聞いている。今なら他の貴族はまずいないし、ゆっくりとすることができそうだ。
 今日は体を癒して、ゆっくりと休むとしよう。陰口の件は今日で一区切りつけて、明日からまた改めて頑張っていくとしよう。
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