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3.図星だったこと
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「まあ、言わせてもらいますが、お二人は勝手な想像でラルリア嬢のことを批判していたようですからね……」
「勝手な想像ですって?」
「ええ、彼女が落ちこぼれなんて、どこで聞いたことかは知りませんが、それは事実無根の噂というものです」
怒っている二人に対して、アドルヴ殿下は涼しい顔を続けていた。
彼は、特に相手を考慮してはいないようである。その意見は、鋭いものだった。それに二人の男性の顔は、先程までにも増して歪んでいる。
「アドルヴ殿下、身内のことだからといって、擁護するのは無茶というものです。ラルリア嬢の能力が劣っているというのは貴族の間でも有名な話です」
「それは、所謂錯覚というものです。リルルナ嬢は優秀というよりも例外ですからね。彼女に比べて劣っているという評価がいつの間にか捻じ曲がってしまったというだけです」
「それは言い訳でしょう!」
二人の男性は、目の前にいるのがこの国の王太子であるということを忘れているのかもしれない。アドルヴ殿下に対して、かなり激昂して言い返している。
それだけ二人の中には、不満が溜まっていたということだろうか。
「ラルリア嬢は、生まれが公爵家というだけで上に立っている無能です。俺達はリルルナ嬢のように秀でている者には文句を言っていません。ただ上に立つのがおかしい者を批判しているというだけです」
「……あなた方は違うというのですか?」
「え?」
男性の言葉に、アドルヴ殿下は端的に言葉を返した。
すると二人の男性は、目を丸めている。それはきっと、アドルヴ殿下の表情が先程までとは異なり冷たいものになったからだろう。
「貴族である以上、あなた方も平民よりは贅沢な暮らしを謳歌しているはずです。それだけの能力があなた方にあるのですか?」
「そ、それは……」
「ここではっきりと言い返せない時点で、聞くまでもありませんね……人に文句を言っている暇があるなら、精進したらどうですか?」
「か、勝手に俺達の評価を決めないでいただきたい」
アドルヴ殿下の指摘によって、二人の男性は勢いを失った。
彼の言葉が、またも図星だったということだろう。
「それなら、お二人のことを調べるとしましょうか? 名前を名乗っていただけますか?」
「い、いや、それは……」
「やましいことがないのなら、名乗ることはできるはずです。僕の名前はアドルヴ・レジエート。この国の王太子です。僕はその地位に対して誇りを持っている。その地位に恥じない振る舞いをしているつもりです。あなた方は、どうなのですか?」
「く、くそっ!」
二人の男性は、アドルヴ殿下の圧によって一目散に逃げ出した。
結局の所、あの二人には誇れるものなどはなかったということなのだろう。堂々と胸を張るアドルヴ殿下を見ていると、猶更そう思ってしまった。
「勝手な想像ですって?」
「ええ、彼女が落ちこぼれなんて、どこで聞いたことかは知りませんが、それは事実無根の噂というものです」
怒っている二人に対して、アドルヴ殿下は涼しい顔を続けていた。
彼は、特に相手を考慮してはいないようである。その意見は、鋭いものだった。それに二人の男性の顔は、先程までにも増して歪んでいる。
「アドルヴ殿下、身内のことだからといって、擁護するのは無茶というものです。ラルリア嬢の能力が劣っているというのは貴族の間でも有名な話です」
「それは、所謂錯覚というものです。リルルナ嬢は優秀というよりも例外ですからね。彼女に比べて劣っているという評価がいつの間にか捻じ曲がってしまったというだけです」
「それは言い訳でしょう!」
二人の男性は、目の前にいるのがこの国の王太子であるということを忘れているのかもしれない。アドルヴ殿下に対して、かなり激昂して言い返している。
それだけ二人の中には、不満が溜まっていたということだろうか。
「ラルリア嬢は、生まれが公爵家というだけで上に立っている無能です。俺達はリルルナ嬢のように秀でている者には文句を言っていません。ただ上に立つのがおかしい者を批判しているというだけです」
「……あなた方は違うというのですか?」
「え?」
男性の言葉に、アドルヴ殿下は端的に言葉を返した。
すると二人の男性は、目を丸めている。それはきっと、アドルヴ殿下の表情が先程までとは異なり冷たいものになったからだろう。
「貴族である以上、あなた方も平民よりは贅沢な暮らしを謳歌しているはずです。それだけの能力があなた方にあるのですか?」
「そ、それは……」
「ここではっきりと言い返せない時点で、聞くまでもありませんね……人に文句を言っている暇があるなら、精進したらどうですか?」
「か、勝手に俺達の評価を決めないでいただきたい」
アドルヴ殿下の指摘によって、二人の男性は勢いを失った。
彼の言葉が、またも図星だったということだろう。
「それなら、お二人のことを調べるとしましょうか? 名前を名乗っていただけますか?」
「い、いや、それは……」
「やましいことがないのなら、名乗ることはできるはずです。僕の名前はアドルヴ・レジエート。この国の王太子です。僕はその地位に対して誇りを持っている。その地位に恥じない振る舞いをしているつもりです。あなた方は、どうなのですか?」
「く、くそっ!」
二人の男性は、アドルヴ殿下の圧によって一目散に逃げ出した。
結局の所、あの二人には誇れるものなどはなかったということなのだろう。堂々と胸を張るアドルヴ殿下を見ていると、猶更そう思ってしまった。
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