使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私は、エルード様とともに馬車に乗っていた。
 私達は、ゲルビド子爵家の屋敷に向かっている。彼らに対して、色々と言うべきことがあるからだ。

「本当によかったのか? 別にお前が付いてくる必要はないのだぞ」
「いえ、覚悟しましたから、もう大丈夫です」

 エルード様は、私のことを心配してくれていた。恐らく、先日話した罪悪感のことを言っているのだろう。
 だが、私は既に決意している。ゲルビド家のことは、私が背負うべきことだ。エルード様だけに、任せてはおけないのである。

「そういうことではない。俺が言っているのは、あの屋敷に戻って大丈夫なのかということだ」
「え?」
「あそこには、いい思い出がないだろう。そんな屋敷に戻ることは、お前にとって苦しいことであるはずだ」

 しかし、エルード様が心配しているのは別のことだった。
 確かに、あのゲルビド家の屋敷は、私にとって忌むべき場所である。散々ひどい生活を送っていたので、いい印象はない。
 ただ、私はそんなことはまったく考えていなかった。私は結構、鈍感だったのかもしれない。

「えっと……多分、問題はないと思います。確かに、あそこには辛い思い出しかありませんが、それを恐れているという訳ではありません」
「……どうやら、お前は強い奴のようだな」
「え? そうなのでしょうか……」

 エルード様は、私のことを褒めてくれた。
 だが、これはそんなに褒められるべきことなのだろうか。私は鈍感で恥ずべきことだと思ったのだが、まったく正反対の評価で少し驚いている。
 しかし、褒められているのだから、素直に受け取っておこう。私は、意外と強い人間であるようだ。

「ふん、それなら心配する必要はないな。徹底的に、ゲルビド家を追い詰めるとするか」
「ええ、よろしくお願いします」
「ほう、迷わなくなったな」
「ええ、もう迷いは捨てました」

 エルード様の言葉に、私ははっきりと答えていた。
 私の中にあった迷いは、先日断ち切った。今は、はっきりとゲルビド家を追い詰めると決意している。
 その覚悟を決めているため、私は非情なことでも言うことができた。決意を固めた私は、もう迷わないのだ。

「ふっ……そういう面でも、お前は強くなったといえるか。もっとも、それがいいことか悪いことかはわからないな」
「そうですね……でも、今の状況においては、いいことだと思っています」
「確かに、そうかもしれんな……」

 私の言葉に、エルード様は少し笑みを浮かべた。
 その笑みが、何を意味するかはわからない。

 私の変化は、いいことなのだろうか、悪いことなのだろうか。
 そんなことを考えながら、私はエルード様との話を続けるのだった。
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