50 / 61
50
しおりを挟む
私は、エルード様とともに馬車に乗っていた。
私達は、ゲルビド子爵家の屋敷に向かっている。彼らに対して、色々と言うべきことがあるからだ。
「本当によかったのか? 別にお前が付いてくる必要はないのだぞ」
「いえ、覚悟しましたから、もう大丈夫です」
エルード様は、私のことを心配してくれていた。恐らく、先日話した罪悪感のことを言っているのだろう。
だが、私は既に決意している。ゲルビド家のことは、私が背負うべきことだ。エルード様だけに、任せてはおけないのである。
「そういうことではない。俺が言っているのは、あの屋敷に戻って大丈夫なのかということだ」
「え?」
「あそこには、いい思い出がないだろう。そんな屋敷に戻ることは、お前にとって苦しいことであるはずだ」
しかし、エルード様が心配しているのは別のことだった。
確かに、あのゲルビド家の屋敷は、私にとって忌むべき場所である。散々ひどい生活を送っていたので、いい印象はない。
ただ、私はそんなことはまったく考えていなかった。私は結構、鈍感だったのかもしれない。
「えっと……多分、問題はないと思います。確かに、あそこには辛い思い出しかありませんが、それを恐れているという訳ではありません」
「……どうやら、お前は強い奴のようだな」
「え? そうなのでしょうか……」
エルード様は、私のことを褒めてくれた。
だが、これはそんなに褒められるべきことなのだろうか。私は鈍感で恥ずべきことだと思ったのだが、まったく正反対の評価で少し驚いている。
しかし、褒められているのだから、素直に受け取っておこう。私は、意外と強い人間であるようだ。
「ふん、それなら心配する必要はないな。徹底的に、ゲルビド家を追い詰めるとするか」
「ええ、よろしくお願いします」
「ほう、迷わなくなったな」
「ええ、もう迷いは捨てました」
エルード様の言葉に、私ははっきりと答えていた。
私の中にあった迷いは、先日断ち切った。今は、はっきりとゲルビド家を追い詰めると決意している。
その覚悟を決めているため、私は非情なことでも言うことができた。決意を固めた私は、もう迷わないのだ。
「ふっ……そういう面でも、お前は強くなったといえるか。もっとも、それがいいことか悪いことかはわからないな」
「そうですね……でも、今の状況においては、いいことだと思っています」
「確かに、そうかもしれんな……」
私の言葉に、エルード様は少し笑みを浮かべた。
その笑みが、何を意味するかはわからない。
私の変化は、いいことなのだろうか、悪いことなのだろうか。
そんなことを考えながら、私はエルード様との話を続けるのだった。
私達は、ゲルビド子爵家の屋敷に向かっている。彼らに対して、色々と言うべきことがあるからだ。
「本当によかったのか? 別にお前が付いてくる必要はないのだぞ」
「いえ、覚悟しましたから、もう大丈夫です」
エルード様は、私のことを心配してくれていた。恐らく、先日話した罪悪感のことを言っているのだろう。
だが、私は既に決意している。ゲルビド家のことは、私が背負うべきことだ。エルード様だけに、任せてはおけないのである。
「そういうことではない。俺が言っているのは、あの屋敷に戻って大丈夫なのかということだ」
「え?」
「あそこには、いい思い出がないだろう。そんな屋敷に戻ることは、お前にとって苦しいことであるはずだ」
しかし、エルード様が心配しているのは別のことだった。
確かに、あのゲルビド家の屋敷は、私にとって忌むべき場所である。散々ひどい生活を送っていたので、いい印象はない。
ただ、私はそんなことはまったく考えていなかった。私は結構、鈍感だったのかもしれない。
「えっと……多分、問題はないと思います。確かに、あそこには辛い思い出しかありませんが、それを恐れているという訳ではありません」
「……どうやら、お前は強い奴のようだな」
「え? そうなのでしょうか……」
エルード様は、私のことを褒めてくれた。
だが、これはそんなに褒められるべきことなのだろうか。私は鈍感で恥ずべきことだと思ったのだが、まったく正反対の評価で少し驚いている。
しかし、褒められているのだから、素直に受け取っておこう。私は、意外と強い人間であるようだ。
「ふん、それなら心配する必要はないな。徹底的に、ゲルビド家を追い詰めるとするか」
「ええ、よろしくお願いします」
「ほう、迷わなくなったな」
「ええ、もう迷いは捨てました」
エルード様の言葉に、私ははっきりと答えていた。
私の中にあった迷いは、先日断ち切った。今は、はっきりとゲルビド家を追い詰めると決意している。
その覚悟を決めているため、私は非情なことでも言うことができた。決意を固めた私は、もう迷わないのだ。
「ふっ……そういう面でも、お前は強くなったといえるか。もっとも、それがいいことか悪いことかはわからないな」
「そうですね……でも、今の状況においては、いいことだと思っています」
「確かに、そうかもしれんな……」
私の言葉に、エルード様は少し笑みを浮かべた。
その笑みが、何を意味するかはわからない。
私の変化は、いいことなのだろうか、悪いことなのだろうか。
そんなことを考えながら、私はエルード様との話を続けるのだった。
3
お気に入りに追加
2,751
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?
鏑木 うりこ
恋愛
父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。
「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」
庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。
少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *)
HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい!
色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー!
★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!
これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる