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 私は、シャルリナのペースに合わせて走ることにした。
 一人では寂しいという彼女の傍に、ついていることにしたのだ。

「……あれ? お兄様?」
「うん?」

 そこで、エルード様が少しペースを落としていることに、私達は気づいた。
 なんというか、私達を待っているような感じである。
 とりあえず、ペースを変えずに走るが、すぐにエルード様に追いつく。やはり、私達を待っていたようである。

「どうかしたのですか? エルード様?」
「いや、お前がペースを落としたから、どうかしたのかと思ってな……」
「ああ、シャルリナのペースに合わせることにしたのです」
「そういうことだったか」

 エルード様は、私のことを心配してくれたようだ。
 それで、わざわざペースを落としてきてくれた彼は、本当に優しい人である。

「お兄様、一人で寂しくなったんですか?」
「む?」
「それで、わざわざペースを落として、来たんでしょう? まったく、仕方ない人ですね……」
「……」

 シャルリナは、エルード様を全力で煽っていた。
 煽れる時には絶対に煽る。それが、彼女の流儀だ。
 例え、自分がどのような状態であってもそれは変わらないのだろう。走っていて、無駄な話はしたくないこの状況でも、それは変わらなかったようだ。

「はあ、はあ……」

 その結果、シャルリナは息を切らしていた。
 元気よく煽ったため、体力を消費したようである。
 こうなることは、彼女もわかっていたはずだ。だが、それでも煽れるので煽ったということなのだろう。

「愚か者、疲れているのに大声で煽るからそうなるのだ」
「はあ、はあ、寂しいのでしょう?」
「そういうことにしてやるから、もう煽るのはやめろ」
「うぐっ……」

 煽ってきたシャルリナを、エルード様は心配していた。少し呆れているような気もする。
 恐らく、彼女がかなり苦しそうにしているからだろう。怒りよりも、そちらの感情の方が大きいのだ。
 その自業自得の疲れに対しては、私も同じような感情を抱いている。彼女の煽れる時に煽おるという流儀は、少し改めた方がいいのではないのだろうか。それも、彼女の魅力といえば、そうなのかもしれないが。

「ふん、お前のそういう所は治せ。いつか痛い目に合うぞ……いや、もうあっているか」
「ふふ、私は折れませんよ。これだけは、私の絶対的な流儀ですから……」

 シャルリナ本人は、自身の流儀を変える気は一切ないようだ。
 それ程までに、エルード様を煽りたいのだろうか。その精神は、最早見上げたものである。
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