使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私とエルード様は、シャルリナの部屋の外にいた。
 彼女が着替えるのを待っているのだ。

「あの怠惰な妹には、困らされるものだ……」
「そうですよね……でも、私は彼女のそういう所が、そこまで嫌いではありませんよ?」
「ふん、まあ、お前の言いたいことがわからない訳でもない」

 待っている間、私達はシャルリナに関する話をしていた。
 意外なことに、エルード様は私の評価に同意してくれた。彼も、怠惰な彼女の一面が嫌いな訳ではないようだ。

「だが、貴族として生きていくためには、あれでは駄目だ。もっときちんとした人間になってもらわなければならない」
「貴族は、大変ですね……」
「……いや、貴族でなくとも、あいつのあの態度は改めるべきだと思うが」

 エルード様が厳しいのは、きちんとした貴族になってもらいたいからのようである。
 貴族の世界は、厳しい世界だ。今の彼女では、上手く生きていけないのだろう。
 そう考えると、私も自信がなくなってくる。私は、貴族として生きていけるのだろうか。

「あ、お二人とも、もういいですよ」
「む?」
「あっ……」

 そんなことを話していると、中からシャルリナの声が聞こえてきた。
 どうやら、着替えが終わったようである。

「それじゃあ、入るよ」
「ええ、どうぞ」

 私とエルード様は、部屋の中に入っていった。
 すると、きちんと着替えたシャルリナがいる。
 よく考えてみれば、これはとても当たり前のことだ。昼間に普段着を着ていることは、当然のことである。

 それなのに、私は少し感動していた。
 シャルリナが寝間着ではない。それだけのことが、少し嬉しいのだ。

「叔母様? 何をきらきらとした視線を向けているんですか?」
「え? その……シャルリナが普段着なのが嬉しくて……」
「……私、叔母様の中でかなり低い評価なのですね。わかっていましたが、なんだか複雑です」

 私の言葉に、シャルリナは少し微妙な反応をしてきた。
 流石に、私がこれだけで感心するのは彼女も嫌なようだ。

「お兄様、確かに私は少し生活を改めた方がいいのかもしれませんね……」
「やっとわかったか」
「ええ、なんというか、私もこんなことで褒められるのは嫌です。よくわかりませんが、この善意がきついというか……」
「なるほど、まあ、わからない訳ではない」

 シャルリナは、何故かやる気を出していた。
 そんなに、私の眼差しが嫌だったのだろうか。
 それは、少し申し訳ない。だが、やる気を出してくれたのなら、これはよかったということなのかもしれない。
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