使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私がシャルリナと話していると、エルード様が現れた。
 昼間に寝間着で過ごす彼女に、彼はかなり怒っているようだ。

「何か俺に言うことはあるか?」
「な、何を勝手に入ってきているんですか?」
「俺はきちんと戸を叩いた。だが、反応が返って来なかったため、少し中の様子を確認することにした。何かあったら困るからな」
「いや、話し声が聞こえていたでしょう?」
「さて、どうだろうな……」

 エルード様は、ゆっくりとシャルリナに近づいていく。
 それに対して、シャルリナはとても怯えている。何かされると思っているのだろう。

「ふん!」
「ああ、何をするんですか?」

 エルード様は、シャルリナの布団をゆっくりと剥いだ。
 さらには、窓のカーテンも開いていく。まずは環境から改めるということなのだろう。

「眩しい……」
「眩しいではない。普通なら、そのリアクションは数時間前に済ませるべきものだ」
「ううっ……」
「早く着替えろ」

 エルード様は、冷静にシャルリナに言葉を放つ。
 それに対して、彼女はとても怯んでいる。これは、着替えるのも時間の問題なのではないだろうか。

「……わかりました。着替えますから、部屋から出て行ってください」
「ふん……言っておくが、着替え終わったか確認するぞ?」
「気持ち悪いですね……そんなに私の普段着が見たいんですか?」
「ほう……」
「すみません、すぐに着替えます」

 鬼気迫るエルード様に、シャルリナは従った。
 これ以上、抵抗しても無駄だと悟ったのだろう。
 そもそも、彼女も別に着替えるくらいは問題ないはずである。だから、すぐに折れたのだろう。

「それじゃあ、私もエルード様と待っているね」
「え? 別に叔母様はいても構いませんけど……」
「でも、着替えって、人に見られたいものではないよね?」
「まあ、私は別に構いませんよ。正直、お兄様がいてもそこまで気にならないですし」
「それは、気にした方がいいと思うけど……」

 シャルリナは、私どころかエルード様に着替えを見られても平気だった。
 いくら兄妹とはいえ、流石にそれは気にした方がいいのではないだろうか。

「まったく、お前には羞恥心すらないのか?」
「いや、他人なら嫌ですけど、身内ですし……」
「身内でも恥じらいは持っておけ。そうでなければ、こちらが困る」

 エルード様は、シャルリナの言葉に微妙な反応をした。
 恥じらいがない妹が、かなり心配なのだろう。
 色々と言うが、彼はとても優しいのだ。妹の将来を思っているいいお兄ちゃんである。
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