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私とエルード様は、シャルリナ様と向き合って座っていた。
よくわからないが戸を開いてくれた彼女と、話し合うことになったのである。
「……なんというか、叔母様はとてもすごい人ですね」
「え?」
「ああ、それについては、この俺も驚いている」
「え?」
二人は、感心したかのように頷き合っていた。
私のことをすごいと思っているらしい。
しかし、何がすごかったのだろうか。なんというか、あまりよくわからない。
「まあ、もうなんだか慣れてきました。私、人見知りするんですけど、叔母様はなんとなく大丈夫な気がします」
「あ、そうですか……?」
「あ、別に私にはもっと気軽に接してもらって構いませんよ。年下にまで、そんな口調でいる必要はありませんから。あなたも変な気分だったでしょう?」
「あ、それじゃあ、うん……」
シャルリナ様は、私にもっと砕けた態度で接していいと言ってくれた。
せっかくなので、私はその提案に乗ることにした。距離感が近くなれば、早く仲良くなれると思ったからだ。
「あ、私に過度な期待はしないでくださいね」
「過度な期待?」
「淑女とか、そういう感じの期待はしないでください。私は、怠惰な人間です。例えば、昼間に部屋で寝間着で寝転がっていても、幻滅しないでください」
「は、はあ……」
シャルリナの言葉に、私はとりあえず頷いておいた。
どうやら、彼女は期待されたくないらしい。
私としては、それは別に構わなかった。そういう日もあるくらいに思えるからだ。
ただ、私の隣にいる人はそれで納得していないようである。
「昼前に寝間着で寝転がっていていい訳があるか。貴族たるもの、身だしなみには常に気を遣え」
「ほら、こういう奴です。これが嫌なんですよ」
「真面目に話を聞け。大体、お前はいつもそうやって……」
「ああ、もうわかりましたから。例え話ですから、実際にはやりませんから」
「……まあ、いい」
怒るエルード様を、シャルリナ様は宥めた。その態度から、結構手慣れているように思える。
納得していないようだったが、エルード様は言葉を止めた。恐らく、私が隣にいるから気を遣ってくれたのだろう。
「……見ての通り、この妹はどうしようもない奴だ。お前はこれから貴族として暮らしていく訳だが、決してこの妹のようにはならないでくれ」
「あ、はい……」
「え? ひどいじゃないですか? まるで、私が貴族としての自覚が足りないみたいに言って……」
「足りないと言っているのだ……」
シャルリナの言葉に、エルード様は呆れていた。
確かに、彼女は貴族としての自覚が少し足りないかもしれない。だから、彼がそうなるのは仕方ないことだろう。
だが、私にとっては、彼女のそういう態度は少し好ましかった。お堅い貴族よりも、彼女のような人の方が親しみやすい。平民として暮らしていたためか、私はそう思うのだ。
よくわからないが戸を開いてくれた彼女と、話し合うことになったのである。
「……なんというか、叔母様はとてもすごい人ですね」
「え?」
「ああ、それについては、この俺も驚いている」
「え?」
二人は、感心したかのように頷き合っていた。
私のことをすごいと思っているらしい。
しかし、何がすごかったのだろうか。なんというか、あまりよくわからない。
「まあ、もうなんだか慣れてきました。私、人見知りするんですけど、叔母様はなんとなく大丈夫な気がします」
「あ、そうですか……?」
「あ、別に私にはもっと気軽に接してもらって構いませんよ。年下にまで、そんな口調でいる必要はありませんから。あなたも変な気分だったでしょう?」
「あ、それじゃあ、うん……」
シャルリナ様は、私にもっと砕けた態度で接していいと言ってくれた。
せっかくなので、私はその提案に乗ることにした。距離感が近くなれば、早く仲良くなれると思ったからだ。
「あ、私に過度な期待はしないでくださいね」
「過度な期待?」
「淑女とか、そういう感じの期待はしないでください。私は、怠惰な人間です。例えば、昼間に部屋で寝間着で寝転がっていても、幻滅しないでください」
「は、はあ……」
シャルリナの言葉に、私はとりあえず頷いておいた。
どうやら、彼女は期待されたくないらしい。
私としては、それは別に構わなかった。そういう日もあるくらいに思えるからだ。
ただ、私の隣にいる人はそれで納得していないようである。
「昼前に寝間着で寝転がっていていい訳があるか。貴族たるもの、身だしなみには常に気を遣え」
「ほら、こういう奴です。これが嫌なんですよ」
「真面目に話を聞け。大体、お前はいつもそうやって……」
「ああ、もうわかりましたから。例え話ですから、実際にはやりませんから」
「……まあ、いい」
怒るエルード様を、シャルリナ様は宥めた。その態度から、結構手慣れているように思える。
納得していないようだったが、エルード様は言葉を止めた。恐らく、私が隣にいるから気を遣ってくれたのだろう。
「……見ての通り、この妹はどうしようもない奴だ。お前はこれから貴族として暮らしていく訳だが、決してこの妹のようにはならないでくれ」
「あ、はい……」
「え? ひどいじゃないですか? まるで、私が貴族としての自覚が足りないみたいに言って……」
「足りないと言っているのだ……」
シャルリナの言葉に、エルード様は呆れていた。
確かに、彼女は貴族としての自覚が少し足りないかもしれない。だから、彼がそうなるのは仕方ないことだろう。
だが、私にとっては、彼女のそういう態度は少し好ましかった。お堅い貴族よりも、彼女のような人の方が親しみやすい。平民として暮らしていたためか、私はそう思うのだ。
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