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私は、エルード様の胸で泣いていた。
だが、そんな中、誰がやって来てしまったようである。
よく考えてみれば、ここは廊下だ。誰かが来ても、別におかしくない場所である。
「何をしているのですか? お兄様……」
「お兄様……?」
私は、エルード様の胸から少し顔を動かして、来訪した人物を見てみる。
その人物は、女の子だった。見た目から考えて、私よりも年下であるはずだ。
そして、エルード様のことをお兄様と呼んだので、彼女は彼の妹なのだろう。
「シャルリナ、お前は何か勘違いしていないか?」
「勘違い? お兄様が、女性を連れこんでいるという認識が間違っているのですか?」
「……勘違いしているようだな」
少女は、シャルリナ様というらしい。
どうやら、彼女はエルード様が女性を連れこんで、こんな所で抱き合っていると思ったようだ。
確かに、端から見るとそう思えるかもしれない。だが、この場所と今日の予定を知っていれば、そんなことは思わないのではないだろうか。
「お前は、俺の言ったことを忘れたのか? 今日は、叔母上を連れてくると言ってあったはずだぞ?」
「叔母上……そういえば、そんな話もありましたね」
「家の予定くらい、きちんと覚えておけ」
「……」
エルード様の言葉に、シャルリナ様は微妙な顔をする。
恐らく、彼の小言を嫌がっているのだろう。
だが、エルード様の言っていることは、もっともなことである。家で何かあるかくらいは、貴族の一員として把握しておかなければならないのではないだろうか。
「ということは、お兄様は叔母様と関係を持っているのですか?」
「何?」
「だって、そういうことでしょう? 抱き合っていたのですから」
「……状況を考えろ。ここがどこだか、お前も知らない訳ではないはずだ」
「……」
シャルリナ様は、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
恐らく、彼女はわかっているのだろう。エルード様が、泣いている私を受け止めてくれただけだと。
わかっていながら、こういっているのだから、彼女はとてもいい性格をしている。もしかして、私のこともわかっていたのだろうか。
「えっと……私は、アルシアです」
「え?」
「あ、自己紹介しないといけないと思って……」
私は、そこでシャルリナ様に話しかけてみた。
とりあえず、自己紹介しておかなければならないと思ったからだ。
だが、シャルリナ様の反応はとても悪い。何故かわからないが、後ずさりされたのだ。
「……失礼します」
「え?」
そのまま、シャルリナ様は去って行ってしまった。
一瞬の出来事に、私はとても混乱するのだった。
だが、そんな中、誰がやって来てしまったようである。
よく考えてみれば、ここは廊下だ。誰かが来ても、別におかしくない場所である。
「何をしているのですか? お兄様……」
「お兄様……?」
私は、エルード様の胸から少し顔を動かして、来訪した人物を見てみる。
その人物は、女の子だった。見た目から考えて、私よりも年下であるはずだ。
そして、エルード様のことをお兄様と呼んだので、彼女は彼の妹なのだろう。
「シャルリナ、お前は何か勘違いしていないか?」
「勘違い? お兄様が、女性を連れこんでいるという認識が間違っているのですか?」
「……勘違いしているようだな」
少女は、シャルリナ様というらしい。
どうやら、彼女はエルード様が女性を連れこんで、こんな所で抱き合っていると思ったようだ。
確かに、端から見るとそう思えるかもしれない。だが、この場所と今日の予定を知っていれば、そんなことは思わないのではないだろうか。
「お前は、俺の言ったことを忘れたのか? 今日は、叔母上を連れてくると言ってあったはずだぞ?」
「叔母上……そういえば、そんな話もありましたね」
「家の予定くらい、きちんと覚えておけ」
「……」
エルード様の言葉に、シャルリナ様は微妙な顔をする。
恐らく、彼の小言を嫌がっているのだろう。
だが、エルード様の言っていることは、もっともなことである。家で何かあるかくらいは、貴族の一員として把握しておかなければならないのではないだろうか。
「ということは、お兄様は叔母様と関係を持っているのですか?」
「何?」
「だって、そういうことでしょう? 抱き合っていたのですから」
「……状況を考えろ。ここがどこだか、お前も知らない訳ではないはずだ」
「……」
シャルリナ様は、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
恐らく、彼女はわかっているのだろう。エルード様が、泣いている私を受け止めてくれただけだと。
わかっていながら、こういっているのだから、彼女はとてもいい性格をしている。もしかして、私のこともわかっていたのだろうか。
「えっと……私は、アルシアです」
「え?」
「あ、自己紹介しないといけないと思って……」
私は、そこでシャルリナ様に話しかけてみた。
とりあえず、自己紹介しておかなければならないと思ったからだ。
だが、シャルリナ様の反応はとても悪い。何故かわからないが、後ずさりされたのだ。
「……失礼します」
「え?」
そのまま、シャルリナ様は去って行ってしまった。
一瞬の出来事に、私はとても混乱するのだった。
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