使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私とエルード様は、スレイン様と対面していた。
 本当に怖い。何を言われるか、ずっと緊張し続けている。早く、彼女のことが判断できることを言ってくれないだろうか。

「……とりあえず、座ってください」
「はい、失礼します……」

 スレイナ様に言われて、私とエルード様は椅子に座った。
 とりあえず、立っているよりは気が楽なので、これは助かる。少しだけかもしれないが、心を落ち着けることができるだろう。

「さて、それでは話を始めましょうか。まず、先程からあなたは私を怖がっているようですね……」
「え? あ、その……」
「それは、当然でしょう。あなたからすれば、私は怖いはずです」
「す、すみません……」

 スレイナ様は、私が怖がっていることを見抜いていた。
 それは、当然のことなのかもしれない。とても緊張していたので、態度に出ていてもおかしくなかったはずである。

「結論から言いましょう。私は、あなたに敵意などは持っていません」
「あ、えっと……」
「もちろん、色々な思いはあります。ですが、あなたには何も罪はありません。だから、そこまで怖がらないでください」
「あ、はい……」

 スレイナ様は、私に対して敵意を向けたりはしていないようだ。
 感覚ではあるが、その言葉は信じていいような気がする。彼女の態度から、そんな気がするのだ。

 なんとなく、彼女がとても固い理由がわかった。恐らく、彼女は私に対してどう接するべきか悩んでいるのだ。
 色々と思う所がある。それは当然のことだ。浮気相手の子供に対して、穏やかな気持ちでいられる訳がない。

 だが、聡明な彼女は、私に恨みをぶつけるようなことはできないのだろう。
 その複雑な思いが、私に対する態度が固くなっているのではないだろうか。

 私も、同じような思いを抱いているので、そのはずである。
 彼女とどう接するべきなのか。彼女がどんな人物なのか。それに、とても悩んでいた。
 だから、彼女も同じ思いだった。願望も入っているかもしれないが、そう思うのだ。

「といっても、あなたには難しいでしょう。その気持ちは、わかります。ですから、それはこれからの態度で示していきます」
「わ、わかりました……」

 スレイナ様は、私の目を真っ直ぐに見ながら言葉を放ってきた。
 その鋭い視線から、私は目を離さない。もう怖がらないという意思を固めて、しっかりと視線を合わせる。
 その目を見ていると、自然と恐怖はなくなっていった。今まで見えてこなかった彼女の心が、その視線を通して伝わってくるからだろうか。
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