使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私は、グルラド様からゴガンダ様の話を聞いていた。
 ゴガンダ様は、病で長くないため、私を探すことを頼んだらしい。

「その……一つ聞いてもいいですか?」
「何かね?」
「ゴガンダ様……私の父は、私の母とどういう関係だったのでしょうか?」
「……そのことか」

 そこで、私はグルラド様に対してその質問をしていた。
 母は、一体どうして公爵家の人間と出会い、関係を持ったのだろうか。その事実をまったく知らなかった私にとって、それはとても気になることである。

「私は、父から話を聞いている。だから、どうして出会ったのか、何故関係をもったのか、君の質問に答えることはできる」
「それなら……」
「だが、その上で、君には話したくないと言っておこう。君が聞くべき話ではないと、私は思うのだ」
「……そうですか」

 グルラド様の言葉に、私は少しだけ察することができた。
 母が何をしていたかは、もう聞くべきではないだろう。これ以上掘り下げても、どちらも気持ちのいい話ではない。
 もし、私が母のことを聞けるとしたら、ゴガンダ様からだけだろう。それ以外の人とその話は、するべきではないはずである。

「……さて、君にはこの後、父と会ってもらう」
「はい……そうなりますよね」

 そこで、グルラド様は話を切り替えてくれた。
 ゴガンダ様と私が会う。それは、当然の流れである。
 彼が私を探していたのだから、その対面は避けられない。私は、父親と真正面から向き合わなければならないのだ。

「ただ、すぐに父に会ってもらう訳ではない。その前に、二人会ってもらう人がいる」
「二人ですか?」
「ああ、一人は私の妻であるサリーハだ。彼女については、心配することはないだろう。君も、問題ないはずだ」
「ということは……」

 グルラド様の含みがある言葉に、私はあることを理解した。
 もう一人は、私にとってかなり緊張しなければならない人物なのだろう。

「もう一人は、私の母であるスレイナだ。当然、父の妻であり、君にとってはあまり気が進む相手ではないだろう」
「は、はい……」

 私にとって、とても厳しい人物。それは、間違いなくゴガンダ様の妻である。
 浮気相手の娘という立場上、その人と話すのはとても怖いのだ。
 エルード様は問題ないと言ってくれた。だが、怖いものは怖いのである。
 しかも、グルラド様の言葉も気になった。彼は、なんだかとても怖がっている気がするのだ。

「父上、あまり怖がらせないでください」
「む?」
「あなたにとっては、怖い母親かもしれませんが、彼女にそうとは限らないでしょう」
「そ、そうか……」

 そこで、エルード様がフォローを入れてきた。
 どうやら、先程の言葉にはグルラド様の主観が入っていたようである。
 よく考えてみれば、母親と祖母では評価は大きく違うだろう。だから、二人の間で相違があるのは当然である。
 つまり。スレイナ様がどのような人なのかはわからないということだ。私は、一体どうなってしまうのだろうか。
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