使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私とエルード様は、ラーファン家の現当主であるグルラド様と対面していた。
 彼は、私の兄である。信じられないことだが、それは紛れもない事実なのだ。
 私は、グルラド様と対面してかなり緊張していた。彼が、私を歓迎してくれていることはわかっている。だが、それでもこの緊張は収まらないだろう。

「さて……まずは、少し重要な話をさせてもらいたい」
「じゅ、重要な話ですか……?」

 グルラド様は、とても重苦しい空気で私に話しかけてきた。
 ただでさえ緊張しているのに、重要な話などと言われると、さらに緊張してしまう。
 だが、私という複雑な立場にある人間がやって来て、重要な話になるのは当然のことである。だから、これは仕方ないことなのだろう。

「私のことは、お兄ちゃんと呼んでもらって構わない」
「え?」
「何?」

 グルラド様の言葉に、私もエルード様もとても驚いていた。
 一体、彼は何を言っているのだろうか。恐らく、エルード様もそう思ったはずである。

「……父上、一体何を言っているのですか?」
「いや、この場を和ませようと思って……」
「そうですか……おかしくなったかと思いましたよ」

 どうやら、グルラド様は冗談であんなことを言ったらしい。
 しかし、あまりに唐突なことだったので、私もエルード様もかなり動揺してしまった。なんというか、思っていたよりもお茶目な人なのだろうか。

「まあ、冗談は置いておいて、私は本当に君の緊張を和らげたいと思っているのだ」
「は、はい……」
「君は、このラーファン公爵家の一員だ。そんな君が、私と話す時に緊張する必要はない。もっと気楽に話してくれていいのだ」
「気楽に……ですか」

 グルラド様に気楽と言われたが、それは中々難しい。
 貴族の気楽に話すというのが、どういう風なのかわからないからだ。
 私は、平民として育ってきた。だから、貴族のことはほとんどわからない。ゲルビド子爵家に仕えていたが、それでもよく知らないのだ。

 私が気楽に話せた人といえば、今は亡き母である。だが、母と話すようにするのは、流石に違うだろう。
 平民と貴族の気楽に話すとは、意味が違うはずである。だから、どうすればいいかよくわからないのだ。

「えっと……とりあえず、まだ気楽に話すのは難しいので、少しずつ慣れていくということでいいですか?」
「ああ、それで構わない。ゆっくりと慣れていってくれ」

 私の言葉に、グルラド様は笑顔を向けてくれた。
 これから、私は貴族として暮らしていく。その中で、貴族としての振る舞いを学んでいけばいいだろう。
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