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 私は、エルード様に連れられて、ある部屋の前まで来ていた。
 ここで、とある人物が待っているらしいのだ。

「休みなくここまで連れてきてしまって、申し訳ないな……だが、お前にはこの屋敷の住人と顔を合わせてもらわないと困るのだ」
「ええ、わかっています。それに、そんな疲れていないので大丈夫です」

 エルード様は、私が疲れていないか心配してくれた。
 だが、私はあまり疲れていない。三日間かけて移動したが、今日の移動は二時間くらいしかかかっていないからである。
 昨日しっかりと眠ったので、私は元気だ。だから、何も問題ないのである。

「さて、今からお前に会ってもらうのは、俺の父上だ。このラーファン家の現当主であり、お前にとっては兄となる人物だ」
「兄……そうですよね。私にとっては、お兄様になるのですね」

 エルード様の言葉に、私は動揺していた。
 今から会うのは、私の兄。そう言われて、なんだかおかしな気持ちになったのだ。
 エルード様に叔母と言われた時もそうだが、私は自分の親族としての位置をどうもおかしく思ってしまうようである。
 複雑な立場なので、これは仕方ないことなのかもしれない。だんだんと慣れていくしかないのだろうか。

「ふっ……お前が、父上の妹とは、おかしな話だな……」
「ええ……」

 エルード様も、私と同じように変に思っているようだ。
 きっと、彼のお父様もそう思っているのではないだろうか。

「父上、叔母上を連れてきました」
「おお、入っていいぞ」

 エルード様が戸を叩くと、中から男性の声が聞こえてきた。
 なんというか、とても嬉しそうな声だ。どうやら、私は歓迎されているらしい。
 それがわかったので、私の緊張は少しだけ和らいだ。エルード様が言っていた通り、心配することはないのだろう。

「失礼します」
「失礼します」

 エルード様に続いて、私は部屋の中に入っていった。
 すると、一人の男性が見えてくる。その男性が、エルード様のお父様なのだろう。
 恐らく、四十代くらいだろうか。私とかなり年が離れているが、彼は私のお兄様なのである。

「君が……私の妹であるアルシアか」
「あ、はい……アルシアです」
「うむ、私はグルラド・ラーファン。このラーファン家の現当主、エルードの父、そして、君の兄だ」
「は、はい……」

 グルラド様は、私にはっきりと兄だと言ってきた。
 彼と私は、親子程年が離れているはずだ。そんな兄がいるなど、本当に驚きである。
 こうして、私は現当主のグルラド様と対面するのだった。
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