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23.然るべき裁きを
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「お前達は勝手だ。エルーシャを迫害しておきながら、都合が悪くなったら手の平を返す。その蛮行がどれ程愚かなことか……」
「そ、そのようなつもりでは……」
「この俺も今まで色々な地を巡ってきたが、お前達程性根が腐った者達を見たことはない。俺の立場が違ったなら、こんな村など焼き尽くしていた所だ」
アルディス様は、村人達に対してはっきりと不快感を示していた。
それに対して、人々は怯えている。当然のことながら、公爵家の人間にそんなことを言われて気が気ではないのだろう。
そんな村人達の様子に、私は思わず少し喜んでしまった。恥じるべきかもしれないが、それでも彼らがこうして罰を受けているという事実が、私にとって嬉しいことだったのだ。
「しかし俺はあくまで、秩序を守る側の人間だ。報復をするつもりはない」
「そ、そうですか……」
「だが、あくまで報復はしないというだけだ。然るべき罪には罰を与える。例えば、エルーシャに対する暴力や略奪、畑を荒らした罪……叩けばいくらでも埃が出るだろう」
「なっ……」
アルディス様は、そこで私を見た。
その目には、決意のようなものが読み取れる。私はそれに、ゆっくりと頷いた。
「これからこの村では、調査が行われる。エルーシャからの事情聴取も当然行う。そして判明した罪を、俺は法に従って裁く。それは正当なる手続きだ」
「な、なんと……」
「言っておくが、この村でも我らが決めた法が有効だ。お前達は忘れているのかもしれないが、ここはアルカルド公爵家の領地だ。暴力も略奪も許される場所ではない。お前達には、塀の中に入ってもらう。場合によっては、鞭打ちだ」
アルディス様は、淡々と事実を口にしていった。
それに村の人達は騒ぎ出す。自分達が今までやってきたことが、そんな風に裁かれるとは思っていなかったのだろう。
「……言っておくが、この俺をここで殺した所で無駄だ。すでにアルカルド公爵家には連絡を入れてある。俺がここで消えた場合、本当に村を焼くことになるだろうな」
「うぐっ……」
「わかったならそこを退け。俺達はもう行く」
アルディス様の言葉に、村の人達は次々と散っていった。
その表情は暗い。村長もロルガーも、私に対して複雑な表情しながら去って行くだけだ。
そんな彼らの中を、アルディス様は私の手を引いて歩き始めた。
「エルーシャ、行こう」
「……はい」
アルディス様の力強い言葉は、私に勇気をくれた。
これで、私はこの村と決別することができる。それは私にとって、とても嬉しいことだった。
「そ、そのようなつもりでは……」
「この俺も今まで色々な地を巡ってきたが、お前達程性根が腐った者達を見たことはない。俺の立場が違ったなら、こんな村など焼き尽くしていた所だ」
アルディス様は、村人達に対してはっきりと不快感を示していた。
それに対して、人々は怯えている。当然のことながら、公爵家の人間にそんなことを言われて気が気ではないのだろう。
そんな村人達の様子に、私は思わず少し喜んでしまった。恥じるべきかもしれないが、それでも彼らがこうして罰を受けているという事実が、私にとって嬉しいことだったのだ。
「しかし俺はあくまで、秩序を守る側の人間だ。報復をするつもりはない」
「そ、そうですか……」
「だが、あくまで報復はしないというだけだ。然るべき罪には罰を与える。例えば、エルーシャに対する暴力や略奪、畑を荒らした罪……叩けばいくらでも埃が出るだろう」
「なっ……」
アルディス様は、そこで私を見た。
その目には、決意のようなものが読み取れる。私はそれに、ゆっくりと頷いた。
「これからこの村では、調査が行われる。エルーシャからの事情聴取も当然行う。そして判明した罪を、俺は法に従って裁く。それは正当なる手続きだ」
「な、なんと……」
「言っておくが、この村でも我らが決めた法が有効だ。お前達は忘れているのかもしれないが、ここはアルカルド公爵家の領地だ。暴力も略奪も許される場所ではない。お前達には、塀の中に入ってもらう。場合によっては、鞭打ちだ」
アルディス様は、淡々と事実を口にしていった。
それに村の人達は騒ぎ出す。自分達が今までやってきたことが、そんな風に裁かれるとは思っていなかったのだろう。
「……言っておくが、この俺をここで殺した所で無駄だ。すでにアルカルド公爵家には連絡を入れてある。俺がここで消えた場合、本当に村を焼くことになるだろうな」
「うぐっ……」
「わかったならそこを退け。俺達はもう行く」
アルディス様の言葉に、村の人達は次々と散っていった。
その表情は暗い。村長もロルガーも、私に対して複雑な表情しながら去って行くだけだ。
そんな彼らの中を、アルディス様は私の手を引いて歩き始めた。
「エルーシャ、行こう」
「……はい」
アルディス様の力強い言葉は、私に勇気をくれた。
これで、私はこの村と決別することができる。それは私にとって、とても嬉しいことだった。
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