村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗

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17.由々しき事態

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「こ、これは……」
「なんということだ……」

 隣の町で一夜を明かしてから、私とアルディス様はフルトアに戻ってきていた。
 しかしながら、村の中は昨日までとはまったく違う様子だ。数々の家が崩れて、辺りにはあまり見たくないものが飛び散っている。これは、明らかに普通ではない状態だ。

「おい、お前、何が起こっているかを説明しろ」
「え? あ、あなたはアルディス様……それに、エルーシャ?」
「事態を説明しろと言っている。余計なことを言う必要はない」
「は、はい……」

 辺りにいた村人の一人に、アルディス様は素早く話しかけた。
 その男性は、私を見て不快そうな顔を見せたが、それはアルディス様が黙らせてくれた。
 それは私にとって、とてもありがたいことである。ここで私に矛先が向けられたら、話が色々とややこしくなるからだ。

「じ、実は熊が現れたのです」
「熊だと?」
「ええ、山から下りてきたみたいで……最近、畑を荒らしていたのはそいつらしいんですけど、今度は人間まで襲い始めて、何人かが犠牲に……」
「……由々しき事態だな」

 村人の説明に、アルディス様はゆっくりとそう呟いた。
 それに関しては、私も同意である。これは大変な事態だ。熊が山から下りてきたなんて、恐ろしいとしか言いようがない。
 山に入る私も、熊には特に警戒している。その生息地には入らない。それは、徹底するべき事柄だ。

「……すぐにアルカルド公爵家に連絡しよう。害獣の対処も、公爵家の使命だ」
「……アルディス様、私は家に戻ります」
「何?」

 そこで私は、アルディス様に呼びかけてから動き出した。
 私の家が、どうなっているかはわからない。しかしながら、そこには狩りのための道具がある。それがもしかしたら、必要になるかもしれない。

「エルーシャ、待て。この状況は危険過ぎる。お前は俺と一緒にいろ。公爵家からの増援を待つのだ」
「その間にも、熊が被害を出すかもしれません」
「お前……しかし、弓と矢で対抗できる訳はない。お前が何かをする必要などないのだ」
「確かに仕留めることはできないかもしれませんが、それでも熊に対抗できるのはこの村で私くらいです」

 アルディス様は、すぐに私を追いかけてきた。
 彼は、私を止めたいようだ。だが止まるつもりなどない。
 公爵家の援軍が来るまで、何日かかるだろうか。その間にも、熊は村を襲撃してくるかもしれない。その熊を退けるためにも、私には武器が必要なのだ。

「……よかった。幸い、私の家は無事みたいですね」
「はあ、はあ……ここがお前の家か」
「ええ……ああ、よかった。特に誰かが入ったりもしていないようですね」

 私は、家の中に入って弓や矢などの道具を取り出した。
 それを身に着けて、私は準備を完了させる。これでとりあえず、熊が出ても少しは対抗できそうだ。これ以上の被害を避けるためにも、なんとかこれで熊を退けたいものだ。
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