村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗

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14.遅い自己紹介

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「……よく考えてみれば、俺はまだお前の名前を聞いていなかったな?」
「え? あ、あれ? 言って……ませんね」

 何かを考えていたアルディス様は、そこで私に質問をしてきた。
 その質問に、私は呆気に取られてしまう。そういえば、確かにまだ私は名乗っていないような気がする。
 一番重要な名前を知らせていなかったなんて、とんだ失態だ。私はまず、自己紹介をしなければならなかったのである。

「私の名前は、エルーシャです。アルディス様は、アルディス様ですよね?」
「ああ、俺はアルディス・アルカルド、アルカルド公爵家の長男だ。もっとも、俺は連れ子であるがな」
「連れ子?」
「母上が、アルカルド公爵と再婚したのだ。アルカルド公爵が最近亡くなったことを、お前は知っているか?」
「え? そ、そうだったんですか?」

 アルディス様の説明に、私は驚いた。
 私達の村も含めた領地の領主が亡くなっていたなんて、まったく知らなかったからだ。
 それは、かなり大事であるような気がする。村の人達は、意図的にそれを私に教えていなかったということだろうか。

「え、えっと……お悔やみ申し上げます」
「ああいや、気にするな。それ自体はもう終わったことだ。ただ、お前に少し問いたいことがある」
「あ、はい。なんですか?」

 アルディス様は、私を真っ直ぐに見つめてきた。
 その真剣な顔に、私は身構える。一体、どんな質問をされるのだろうか。

「お前の母親のことだ。名前はなんという?」
「えっと、エルファナです」
「あの村の出身で、都会に出ていたのか?」
「ええ、出ていました」
「お前の年齢は?」
「え? あ、はい。今年で十六歳になります」
「十六……十六なのか?」
「あ、はい……」

 アルディス様は、私の発言に対して目を丸めていた。
 私の年齢に、かなり驚いているようだ。
 それは少々、失礼な話である。確かに私は小柄かもしれないが、そんなに驚かなくてもいいだろう。

「……俺と二つしか違わないとはな。それは驚きだ」
「え? アルディス様って……十四歳ではないですよね? 十八歳なんですか?」
「……もっと上に見えるか?」
「あ、その……」

 しかし私も直後に、とても失礼なことを言ってしまった。
 ただアルディス様が、まだ十八歳だったなんて驚きだ。てっきり、二十代前半くらいだと思っていた。どうやら私達は、お互いに年齢を誤解していたようである。
 もしかしたら、彼との接し方はもう少し考えた方がいいのかもしれない。少なくとも父親扱いとかはやめておいた方がいいだろう。二歳差でそんな風に思うのは、流石に失礼だろうし。
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