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12.丈夫な体
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「まあ、いい状態ではありませんね。見たらわかる通り、栄養が明らかに足りていない」
「それはそうだろうな」
「しかしながら、特に病気の類は見受けらませんな。もっともそれは、田舎町の藪医者の見解ですからね。大きな町の病院で、改めて適切な検査を受けられた方がよろしいかと……」
「それはもちろん心得ている。とりあえず、今病気にかかっていないなら安心できる」
アルディス様が呼んだお医者様は、私を診察してくれた。
私は、昔らから体が丈夫だった。それはやはり間違いではなかったらしく、特に病気にはかかっていないようだ。
「さて、それなら次は風呂ということになるか。店主、すまないがこの子を風呂まで案内してもらえるか?」
「はい、もちろんです。さあ、お嬢ちゃんこっちにいらっしゃい」
「あ、はい」
宿屋の店主さんに呼ばれて、私はゆっくりと歩き始める。
とりあえず診察はこれで終わりであるようだ。何事も無くて、本当に一安心である。
次は、言われていた通りお風呂に入るらしい。それがどんな所なのか、私は少しわくわくしていた。
「はい。ここがお風呂よ、お嬢ちゃん。えっと、入ったことがないんだってね?」
「あ、はい。家……所か、村にもなかったので」
「フルトアの方から来たんだっけ? 確かに、あの村にはお風呂がなかったね。まあ、色々と大変だからねぇ。でも、やっぱりいいもんだよ?」
「そ、そうなんですか?」
私が案内された場所には、二つの入り口があった。
男と女と書かれているので、男女で分かれるということなのだろう。
当然私は、女と書いてある方に足を進める。するとその先には、棚が並んでいた。
「これがお風呂なんですか?」
「ああ、いや、ちょっと違うかね? ここはそう……脱衣所ってやつだよ」
「脱衣所?」
「ここで服を脱いで、あのドアの先に行くんだ。そこがお風呂ってやつだね」
「そ、そうなんですね……」
店主さんの話に、私は少しだけ恥ずかしくなってきた。
いくらなんでも、何も知らなさ過ぎるからだ。こんなことなら、もっと村の外の生活についても学んでおけばよかったと思う。
ただ後悔しても仕方ないので、私は言われた通り服を脱ぐ。水浴びと同じということは、あのドアの先に水があるということなのだろうか。
「……お嬢ちゃん、本当に細いねぇ?」
「あ、そうですか?」
「ああ、なんというかひどい話だ。フルトアって村に対する印象が、随分と変わったよ」
店主さんは、私の体を見てかなり驚いていた。
きっとこの店主さんも、フルトアの本当の姿は知らなかったのだろう。隣の町に住んでいても、わからないものはわからないのだ。あの村は本当に、うまく本性を隠している。
「ああ、呼び止めて悪かったね。私はここにいるから、わからないことがあったら言ってくれ」
「わかりました。それじゃあ、行ってきます」
「ああ、いってらっしゃい」
店主さんに挨拶をしてから、私は言われた場所のドアを開ける。
こうして私は、しばらく初めてのお風呂を体験するのだった。
「それはそうだろうな」
「しかしながら、特に病気の類は見受けらませんな。もっともそれは、田舎町の藪医者の見解ですからね。大きな町の病院で、改めて適切な検査を受けられた方がよろしいかと……」
「それはもちろん心得ている。とりあえず、今病気にかかっていないなら安心できる」
アルディス様が呼んだお医者様は、私を診察してくれた。
私は、昔らから体が丈夫だった。それはやはり間違いではなかったらしく、特に病気にはかかっていないようだ。
「さて、それなら次は風呂ということになるか。店主、すまないがこの子を風呂まで案内してもらえるか?」
「はい、もちろんです。さあ、お嬢ちゃんこっちにいらっしゃい」
「あ、はい」
宿屋の店主さんに呼ばれて、私はゆっくりと歩き始める。
とりあえず診察はこれで終わりであるようだ。何事も無くて、本当に一安心である。
次は、言われていた通りお風呂に入るらしい。それがどんな所なのか、私は少しわくわくしていた。
「はい。ここがお風呂よ、お嬢ちゃん。えっと、入ったことがないんだってね?」
「あ、はい。家……所か、村にもなかったので」
「フルトアの方から来たんだっけ? 確かに、あの村にはお風呂がなかったね。まあ、色々と大変だからねぇ。でも、やっぱりいいもんだよ?」
「そ、そうなんですか?」
私が案内された場所には、二つの入り口があった。
男と女と書かれているので、男女で分かれるということなのだろう。
当然私は、女と書いてある方に足を進める。するとその先には、棚が並んでいた。
「これがお風呂なんですか?」
「ああ、いや、ちょっと違うかね? ここはそう……脱衣所ってやつだよ」
「脱衣所?」
「ここで服を脱いで、あのドアの先に行くんだ。そこがお風呂ってやつだね」
「そ、そうなんですね……」
店主さんの話に、私は少しだけ恥ずかしくなってきた。
いくらなんでも、何も知らなさ過ぎるからだ。こんなことなら、もっと村の外の生活についても学んでおけばよかったと思う。
ただ後悔しても仕方ないので、私は言われた通り服を脱ぐ。水浴びと同じということは、あのドアの先に水があるということなのだろうか。
「……お嬢ちゃん、本当に細いねぇ?」
「あ、そうですか?」
「ああ、なんというかひどい話だ。フルトアって村に対する印象が、随分と変わったよ」
店主さんは、私の体を見てかなり驚いていた。
きっとこの店主さんも、フルトアの本当の姿は知らなかったのだろう。隣の町に住んでいても、わからないものはわからないのだ。あの村は本当に、うまく本性を隠している。
「ああ、呼び止めて悪かったね。私はここにいるから、わからないことがあったら言ってくれ」
「わかりました。それじゃあ、行ってきます」
「ああ、いってらっしゃい」
店主さんに挨拶をしてから、私は言われた場所のドアを開ける。
こうして私は、しばらく初めてのお風呂を体験するのだった。
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