村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗

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8.初めての定食屋

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「あ、いらっしゃいませ……って、あれ? ア、アルディス様?」
「邪魔をするぞ」

 私はアルディス様と一緒に、お店の中に入った。
 そこには、村の酒場のような光景が広がっている。ここは定食屋というらしいのだが、私にとっては馴染みがない場だ。
 その店の店員さんは、アルディス様を見て驚いている。彼女は次に私を見て、また驚いた。

「え? その子、大丈夫なんですか?」
「大丈夫ではないだろう。どうやら昨日から何も食べていないらしいしな……それに日頃から満足に食べられてもいなさそうだ」
「あ、えっと、すぐに何か作りますね。胃にいいものがいいですよね?」
「ああ、よろしく頼む」

 アルディス様の言葉を聞いてから、店員さんは慌てたように店の奥へと行ってしまった。
 そんな彼女のことを特に気にすることもなく、アルディス様は近くにあった椅子を引く。

「とりあえず座れ」
「あ、はい。し、失礼します……」
「ふむ……」

 私が腰掛けるのを確認してから、アルディス様は私の対面の椅子に座る。
 すると、店の奥から先程とは違う定員さんがやって来た。彼はアルディス様と私の前に水を出してくれる。

「あ、あの、アルディス様、飲んでもいいですか?」
「ああ、もちろん構わない。俺のことは気にするな」
「それじゃあ、いただきます」

 私は手を合わせてから、水を飲む。水に関しては、家にもあった。ただ色々とあって喉が渇いていたので、これはとてもありがたい。

「アルディス様、ご注文はお決まりですか? そちらのお嬢さんは、既に注文済みのようですか?」
「む? そうだな。なら、俺はステーキとキャベツの盛り合わせを頼む。注文は以上だ」
「わかりました。ステーキとキャベツの盛り合わせですね」

 そんな私の目の前で、アルディス様は食べ物を注文していた。
 時間的にはまだお昼前ではあるはずだが、彼も昼食を済ませてしまうということだろうか。

「アルディス様、お待たせしました。お嬢さんのために、おかゆを作ってきましたよ!」
「おかゆ、ですか?」
「ええ、お嬢さん。シンプルですけど、おいしいですよ?」
「あ、えっと……い、いただきます」

 私はアルディス様と定員さんの前で、再び手を合わせた。そして二人の前で、おかゆというものをいただくことにする。
 とりあえず私は、スプーンでお米をすくってみる。多分これは、お米の類なのだろう。そういうものは今までほとんど食べたことがないので、少々心配である。
 しかし店員さんがおいしいと言っているのだし、ここは勇気を持って食べてみるとしよう。

「んっ……お、おいしいです」
「そ、そうですか? それなら良かったです」

 塩味のおかゆは、温かくてとてもおいしかった。
 それになんだか、とても食べやすい。水分があるからだろうか。
 空腹だったため、私はどんどんとスプーンを動かしていく。こうして私は、しばらくおかゆをいただくのだった。
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