村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗

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5.一目見れば

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 呆気に取られていたのか、私の周りにいる人達は馬車がこちらに近づいてきたも動かなかった。そんな彼らの前で、馬車の戸がゆっくりと開いていく。
 中から現れたのは、若い男性だった。高貴な身なりをしたその男性は、辺りを鋭い視線で見渡した後、私に近づいて来る。

「貴様ら、ここで何をやっていた?」
「な、何をおって別に……ねぇ?」
「え、ええ。こ、ここでこいつが倒れていたから、助けようとしていたんだよ!」

 男性の問いかけに対して、ロルガーは嘘をついた。
 彼の声は、震えている。きっと男性も、それが偽りであると簡単に見抜けるだろう。

「お前は確か、この村の村長の孫だったか?」
「そ、そうだ。この村で最も高い身分にあるのさ」
「身分か。くだらんな……」
「え? おごっ……」

 そこで男性は、ロルガーの首をその大きな手で握った。
 いつも威張っている村長の孫は、突然のことにかなり困惑しているようだ。
 それは私だって同じである。何が起こっているのか、正直理解が追いついていない。

「貴様に本当の身分の差というものを教えてやろうか?」
「な、なんだ。お、お前は……」
「気付いていないというなら、それは愚かなことだ。貴様は先程、この俺に無礼を働いた。ことがことならその首が飛んでいたということを知れ」
「ま、まさか、がっ……」

 男性は、ロルガーを大きく押しのけた。
 その衝撃で、彼はその場で尻餅をつく。その顔は恐怖に歪んでいた。それは恐らく、馬車にある紋章を見たからだろう。
 彼の言葉によって、私もそれを確認していた。その馬車についている紋章には見覚えがある。あれは多分、アルカルド公爵家の紋章だ。

「お前達のような愚物が、我が領地にはびこっているということは由々しき事態だ。年端も行かぬ少女によってたかって、恥を知れ」
「わ、私達は何も……」
「していないというのか! そんな下らない嘘をこの俺が見抜けぬとも思ったか! この少女の顔を見ればわかる……お前達はこの少女を迫害しているな?」
「そ、それは……」

 アルカルド公爵家の男性は、私を見て事態をすぐに察したようである。
 よく考えてみれば、痩せ細っている私はこの村の中では明らかに異質だ。その差から私が何かしらの被害を受けていることは、容易に予測できたということなのだろう。

「どのような理由があるかは知らんが……いや例え、どのような理由があったとしても、お前達の行いは許されるものではない。よく覚えておけ。このアルディス・アルカルドがお前達を決して許さないと」
「ひっ……」

 アルディス様の言葉によって、周囲の人達は一目散に逃げ出した。
 それを見ながら、彼はため息をつく。村の人達に、かなり呆れているようだ。
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