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2.生きていくために

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 山の中に入った私は、うさぎを見つけて矢を放つ。
 その矢は、なんとかうさぎに命中した。しかし急所を外れたのか、うさぎはまだもがき苦しんでいる。
 私は、近くにあった手ごろな大きさの石を手に取り、それをそのままうさぎに振り下ろす。

「……この瞬間は、いつも嫌だな」

 私は、うさぎの前で手を合わせた。
 動物の命を奪うのは気が引ける。しかし生きるためには、こうしなければならない。

「こういうことの手際だけが良くなっていくのは、悲しいことだけど……」

 村の人達は、私や母に食料や日用品を売ってくれなかった。
 元々物々交換が主流である村だが、私達が野菜などを育てても決して交換には応じてくれなかったのである。
 故に私と母は、たまに来る行商人を頼ったり、このように山に入ったりしてなんとか生活しているのだ。

「畑は荒らされてしまったし……」

 私と母が野菜を育てていた畑は、何故か荒らされていた。
 それが動物の仕業ではないことなんて、わかっている。村の誰かが、悪意を持って畑を荒らしたのだ。
 それによって私達の家の畑は、使えない状態になってしまっている。なんとか再生させようと頑張っているが、少なくとも今年の間野菜の栽培は無理であるだろう。

「肉と山菜と、それから水と……」

 そんな私にとって、山というものは宝の宝庫であった。
 多少の危険はあるが、ここでは色々なものが手に入る。生きていくために必要なものは、大体ここで揃うのだ。

「でも、お母さんはよく知っていたよね……狩りの術なんて」

 山で様々な資源を得る術は、お母さんが教えてくれた。
 どうしてかを聞いてもはぐらかされたため、お母さんがそれらの術をどこで知ったかはわからない。ただその術は、私に受け継がれて今も役に立っている。

「さてと、もう少し頑張らないと……」

 山の中に入った私は、自分が必要とする以上の獲物を取ることが多い。
 それは私が持って帰ったものを、村の人達に奪われるからだ。この山は皆のもの、だから取れたものも皆のもの。それが彼らの主張だ。
 もちろん逆らってもいいのだが、あまり騒ぎを起こし過ぎるのも良くないため、私もそれには従っている。故に自分の分だけではなく、ある程度取る必要があるのだ。

「山に対しては、申し訳ないと思うけど……」

 この山に暮らす動物や植物には、申し訳ないと思っている。
 しかしこれも、私が生きるためには割り切らなければならないことだ。
 故に私は、いつも手を合わせる。この山の恵みに感謝しながら、私は今日も生きていくのだ。
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