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41.英雄のファンクラブ

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 オーケイン王国の英雄であるラルバルースには、ファンクラブなるものがある。
 ラルバルースのファン同士で集まって交流して、親睦を深めるというのが、そのファンクラブの目的であるらしい。
 その発案者の一人は、エルヴァイン公爵だ。彼は貴族だろうが平民だろうが、構わずファンクラブに入れている。ラルバルースのファンという観点においては、皆平等であるそうだ。

「いや、よく来てくれた、リメリア嬢。君の来訪に感謝しているよ。やはり、ルヴァーリ伯爵家――つまりはラルバルースの子孫である君がいるのといないのとでは、まったく持って違う訳だからね」
「そういうものなのでしょうか? 正直な所、私よりも皆さんの方がご先祖様には詳しいくらいなのですけれど……」
「それは当然のことだと、皆も理解しているよ。ご先祖様の好きな食べ物や嫌いな食べ物なんて、普通は気にならないのだからね」

 私の言葉に、エルヴァイン公爵は豪快に笑っていた。
 基本的に穏やかな彼も、ことラルバルースのことを話す時にはテンションが高い。
 根っからのファンだとは聞いているが、それは間違いないようだ。

「ただ、君はラルバルースの血を引いているからね。それは大変に重要なことだ。君の存在そのものが、ラルバルースが生きていた証になるのだからね」
「……リメリアが呼ばれるのは理解できますが、私まで招いていただいて良かったのでしょうか? はっきりと言っておきますが、私はラルバルース氏にそこまで見識が深い訳ではありません」

 エルヴァイン侯爵の言葉に、バルハルド様が少し遠慮がちに言葉を発した。
 今日は、ファンクラブの定例会であるらしい。そこに私と彼は、招かれたのだ。
 そういった催しに、私は時々参加している。そのため、特になんとも思ってはいない。しかしバルハルド様にとっては初めてのことなので、戸惑っているのだろう。

「もちろん、君がいることも重要だとも。なんと言ったって、君はラルバルースの子孫であるリメリア嬢と結ばれるのだからね。皆も君のことを知りたいだろう。君がラルバルースをどう思っているかとか……どうしてリメリア嬢と婚約を結んだのか、とか」
「……私は別にラルバルース氏の血を引いているからリメリア嬢と婚約した訳ではありません。その存在を考慮したことなど、ないのですが」
「おお、流石はバルハルド、良いことを言う」
「……」

 エルヴァイン公爵の言葉に、バルハルド様は目を細めていた。
 彼としては、非常にやりにくいのだろう。今日の公爵は、まったく持って普通ではない。
 ただ、これに関しては許してあげて欲しい。日頃から忙しくしているエルヴァイン公爵にとって、この定例会は楽しみの一つなのだから。
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