41 / 50
41.英雄のファンクラブ
しおりを挟む
オーケイン王国の英雄であるラルバルースには、ファンクラブなるものがある。
ラルバルースのファン同士で集まって交流して、親睦を深めるというのが、そのファンクラブの目的であるらしい。
その発案者の一人は、エルヴァイン公爵だ。彼は貴族だろうが平民だろうが、構わずファンクラブに入れている。ラルバルースのファンという観点においては、皆平等であるそうだ。
「いや、よく来てくれた、リメリア嬢。君の来訪に感謝しているよ。やはり、ルヴァーリ伯爵家――つまりはラルバルースの子孫である君がいるのといないのとでは、まったく持って違う訳だからね」
「そういうものなのでしょうか? 正直な所、私よりも皆さんの方がご先祖様には詳しいくらいなのですけれど……」
「それは当然のことだと、皆も理解しているよ。ご先祖様の好きな食べ物や嫌いな食べ物なんて、普通は気にならないのだからね」
私の言葉に、エルヴァイン公爵は豪快に笑っていた。
基本的に穏やかな彼も、ことラルバルースのことを話す時にはテンションが高い。
根っからのファンだとは聞いているが、それは間違いないようだ。
「ただ、君はラルバルースの血を引いているからね。それは大変に重要なことだ。君の存在そのものが、ラルバルースが生きていた証になるのだからね」
「……リメリアが呼ばれるのは理解できますが、私まで招いていただいて良かったのでしょうか? はっきりと言っておきますが、私はラルバルース氏にそこまで見識が深い訳ではありません」
エルヴァイン侯爵の言葉に、バルハルド様が少し遠慮がちに言葉を発した。
今日は、ファンクラブの定例会であるらしい。そこに私と彼は、招かれたのだ。
そういった催しに、私は時々参加している。そのため、特になんとも思ってはいない。しかしバルハルド様にとっては初めてのことなので、戸惑っているのだろう。
「もちろん、君がいることも重要だとも。なんと言ったって、君はラルバルースの子孫であるリメリア嬢と結ばれるのだからね。皆も君のことを知りたいだろう。君がラルバルースをどう思っているかとか……どうしてリメリア嬢と婚約を結んだのか、とか」
「……私は別にラルバルース氏の血を引いているからリメリア嬢と婚約した訳ではありません。その存在を考慮したことなど、ないのですが」
「おお、流石はバルハルド、良いことを言う」
「……」
エルヴァイン公爵の言葉に、バルハルド様は目を細めていた。
彼としては、非常にやりにくいのだろう。今日の公爵は、まったく持って普通ではない。
ただ、これに関しては許してあげて欲しい。日頃から忙しくしているエルヴァイン公爵にとって、この定例会は楽しみの一つなのだから。
ラルバルースのファン同士で集まって交流して、親睦を深めるというのが、そのファンクラブの目的であるらしい。
その発案者の一人は、エルヴァイン公爵だ。彼は貴族だろうが平民だろうが、構わずファンクラブに入れている。ラルバルースのファンという観点においては、皆平等であるそうだ。
「いや、よく来てくれた、リメリア嬢。君の来訪に感謝しているよ。やはり、ルヴァーリ伯爵家――つまりはラルバルースの子孫である君がいるのといないのとでは、まったく持って違う訳だからね」
「そういうものなのでしょうか? 正直な所、私よりも皆さんの方がご先祖様には詳しいくらいなのですけれど……」
「それは当然のことだと、皆も理解しているよ。ご先祖様の好きな食べ物や嫌いな食べ物なんて、普通は気にならないのだからね」
私の言葉に、エルヴァイン公爵は豪快に笑っていた。
基本的に穏やかな彼も、ことラルバルースのことを話す時にはテンションが高い。
根っからのファンだとは聞いているが、それは間違いないようだ。
「ただ、君はラルバルースの血を引いているからね。それは大変に重要なことだ。君の存在そのものが、ラルバルースが生きていた証になるのだからね」
「……リメリアが呼ばれるのは理解できますが、私まで招いていただいて良かったのでしょうか? はっきりと言っておきますが、私はラルバルース氏にそこまで見識が深い訳ではありません」
エルヴァイン侯爵の言葉に、バルハルド様が少し遠慮がちに言葉を発した。
今日は、ファンクラブの定例会であるらしい。そこに私と彼は、招かれたのだ。
そういった催しに、私は時々参加している。そのため、特になんとも思ってはいない。しかしバルハルド様にとっては初めてのことなので、戸惑っているのだろう。
「もちろん、君がいることも重要だとも。なんと言ったって、君はラルバルースの子孫であるリメリア嬢と結ばれるのだからね。皆も君のことを知りたいだろう。君がラルバルースをどう思っているかとか……どうしてリメリア嬢と婚約を結んだのか、とか」
「……私は別にラルバルース氏の血を引いているからリメリア嬢と婚約した訳ではありません。その存在を考慮したことなど、ないのですが」
「おお、流石はバルハルド、良いことを言う」
「……」
エルヴァイン公爵の言葉に、バルハルド様は目を細めていた。
彼としては、非常にやりにくいのだろう。今日の公爵は、まったく持って普通ではない。
ただ、これに関しては許してあげて欲しい。日頃から忙しくしているエルヴァイン公爵にとって、この定例会は楽しみの一つなのだから。
323
お気に入りに追加
1,172
あなたにおすすめの小説
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる