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25.同じ境遇だからこそ

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「……事情はよくわかりました。しかしエルヴァイン公爵、少しよろしいでしょうか?」
「む?」

 話が一区切りついた時、今まであまり言葉を発していなかったバルハルド様がゆっくりと口を開いた。
 彼の表情は平坦である。今回の件にはほぼ確実に思う所があるはずなのに、彼は冷静を保っているようだ。

「その件を公表するということは、エルガドを苦しめることになるかもしれません。私自身、己が出自によって苦労した故に、少々心配です」
「ふむ、もちろんそれはわかっている。しかし、このままヴォンドラ伯爵家を野放しにしている訳にもいかない。彼らの凶刃が、いつ他者に向けられるかわからない以上、黙っておくことなどはできないのだよ」

 バルハルド様の言葉に、エルヴァイン公爵は淡々と言葉を返していた。
 エルヴァイン公爵は、お優しい方だ。当然、バルハルド様が懸念していることも、考えてはいるのだろう。
 しかし公爵は、同時に血気盛んな所がある。非道には制裁を、そういう人だ。ヴォンドラ伯爵家を逃がすつもりはないだろう。

「ならばせめて、エルガドのことは私に任せていただけないでしょうか」
「ほう?」
「彼と俺の身の上には通じる所があります。無論、俺は彼に比べて恵まれた環境にいた訳ではありますが、それでも多少は理解できるつもりです」
「ふむ、それはもちろんそうだろう。君に預けることに、特に異論はないよ」

 バルハルド様の提案に、エルヴァイン公爵はゆっくりと頷いた。
 彼はそれから、エルガドの様子を伺う。本人の意思を確かめようとしているのだろう。

「……バルハルド様、あなたの提案はありがたい限りです。しかし、本当に良いのでしょうか? 僕はバルハルド様の役に立てる人間という訳ではないと思いますが」
「役に立つ立たないなどは、今決まることではない。お前が努力し、力をつける意思があるのなら、それはいくらでも覆せることだ」
「……わかりました。それなら、お言葉に甘えさせていただきます。僕自身も、これからどうして行くべきなのかは、決めかねていましたから」

 エルガドは、バルハルド様に対してゆっくりと跪いた。
 彼の意思も、固まったようだ。それにエルヴァイン公爵は、嬉しそうに頷く。
 バルハルド様なら絶対に悪いようにしない。それを理解しているのだろう。

「ふむ、それならエルガドのことは君に任せよう、バルハルド。そうしてくれるなら、私としても安心だ」
「お任せください、エルヴァイン公爵。このエルガドは、私が責任を持って導きます」

 エルヴァイン公爵の言葉に、バルハルド様は力強く頷いた。
 彼が何を考えているのか、それはわからない。ただ私は、何をするにせよバルハルド様を支えていくつもりだ。それが妻となる私の役目なのだから。
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