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2.夫の友人達

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「どこに行っていた?」
「少し所用がありまして」
「所用か。まあ、いい。今は客人が来ている。話は後で聞くとしよう」

 ヴォンドラ伯爵の屋敷に戻ってきた私に、ウルガド様は少し怒っているようだった。
 今回の件は、私の独断によってなしたことだ。それも当然だろう。
 こういった時に、私は夫に何も話さない。彼の名誉を傷つけることになりかねないので、黙っているのだ。

 もっとも、流石にウルガド様も私が何をしているかは、察しているだろう。
 彼に何か不手際があった時に行動しているのだから、ばれている可能性は高そうだ。

「ファナト様、それにクルメア様、お久し振りです」
「お久し振りですね、リメリアさん。お元気そうで何よりです」
「……あなたが出掛けているなんて、私達もタイミングが悪かったですね」
「いえ、それは私の不手際ですから」

 客室までやって来た私は、目の前にいる男女に挨拶した。
 彼らは、ファナト様とクルメア様、ベルージュ侯爵家の嫡子夫妻だ。
 ウルガド様とファナト様は、友人関係である。故にこうして、時々訪ねて来ることがあるのだ。

 ただ、私は二人が仲良く話している所を実は見たことがない。
 ファナト様の方は友好的に接しているのだが、ウルガド様はそんな感じではないのだ。
 もしかしたら二人の交友関係というものは、両親などから来る腐れ縁的なものなのかもしれない。私は常々そう思っている。

「お変わりはありませんか?」
「ええ、クルメア様もお元気でしたか?」
「ええ、元気でしたよ? ただ、変化はありました」
「変化、ですか……」

 ちなみに私の方は、クルメア様と仲良くさせてもらっている。
 彼女は、早くにファナト様と結婚した、いわば妻としての先輩だ。故に色々なことを教えてもらっている。

「……まさか」
「ええ、そのまさかです。子供ができたのです」
「それは、おめでとうございます。ファナト様も、おめでとうございます」
「ありがとうございます。本当に、今は嬉しくて仕方ありません」

 ファナト様とクルメア様は、とても嬉しそうにしていた。
 子宝に恵まれたのだから、それは当然だ。私の方もなんだか、舞い上がってしまっている。

「めでたいことではあるが、わざわざ家に来ることもないだろう。身重の妻に、あまり無理をさせるな」
「こちらには私の方から来たいと言ったんです。リメリアさんには、是非自分の口から伝えておきたくて」
「なるほど、妻には逆らえないか」

 ウルガド様も、心なしか嬉しそうにしているようだった。
 なんだかんだ言っても、ファナト様とは親友だと思っているのだろうか。
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