18 / 18
18.王位の行方
しおりを挟む
イルヴァン様が失脚したことによって、次の王位を誰が継承するかが決まった。
その王位を継承することになった人物は、第一王子であるアルバトス様だ。結果として第一王子である彼が、順当に王位を継ぐことになったのである。
「……本当によかったんですか?」
「ええ、僕は王位にはそんなに興味がありませんでしたからね……イルヴァン兄上が王位を継がないなら、別にいいんです」
「アルバトス様も、同じことを言っていましたけど……」
「まあ、イルヴァン兄上の悪事を暴いたのは僕ですからね。ここは、僕の意向に従ってもらったという訳です」
後からわかったことだったが、アルバトス様もウルド様も王位にはそれ程興味がなかったようである。
いや、それ所かお互いに王位を押し付け合っていた。二人にとって重要だったのは、イルヴァン様が王位を継がないことだったらしい。
それはなんというか、驚くべきことである。てっきり兄弟全員が、王位を巡って争っているものだとばかり思っていたのだが。
「ウルド様は、変わっていますね……」
「そうでしょうか? ええ、そうなのでしょうね。確かに僕は、変わり者といえるかもしれません」
「まあ、私はそんな変わり者であるあなたのおかげで助かった訳ですが……」
ウルド様は、はっきりと言って変わり者である。
木の上に登ったりするし、その言動は予想がつかない。天才肌とでもいうのだろうか。少々自由奔放な所がある。
ただ彼のそういう部分に、私は助けられてきた。だからだろうか、そんな彼の気質が私には心地よく思える。
「というか、マルテリア嬢の方こそよかったんですか? 僕なんかと婚約して」
「……ええ、よかったと思っています。ウルド様は変わっていますが、尊敬できる方ですから」
「僕にそういうことを言うあなたも、充分に変わり者であると思いますけどね」
私の言葉に、ウルド様は笑っていた。
しかし私は、彼が本当に尊敬できる人だと私は考えている。その飄々とした様まで含めて、彼は立派な紳士であるとそう思っているのだ。
「ああ、そうだ。一つ言い忘れていました」
「おや、どうかしましたか?」
「私のことは、マリーと呼んでください。親しい人は皆そう呼んでいますから」
「そうでしたか……それでは、マリー嬢ということですね?」
「ええ、それでお願いします」
そこで私とウルド様は、同時に笑い合った。
この空気が心地いい。これからも彼とは、こんな温かい日々を過ごしていこう。私はそう思うのだった。
その王位を継承することになった人物は、第一王子であるアルバトス様だ。結果として第一王子である彼が、順当に王位を継ぐことになったのである。
「……本当によかったんですか?」
「ええ、僕は王位にはそんなに興味がありませんでしたからね……イルヴァン兄上が王位を継がないなら、別にいいんです」
「アルバトス様も、同じことを言っていましたけど……」
「まあ、イルヴァン兄上の悪事を暴いたのは僕ですからね。ここは、僕の意向に従ってもらったという訳です」
後からわかったことだったが、アルバトス様もウルド様も王位にはそれ程興味がなかったようである。
いや、それ所かお互いに王位を押し付け合っていた。二人にとって重要だったのは、イルヴァン様が王位を継がないことだったらしい。
それはなんというか、驚くべきことである。てっきり兄弟全員が、王位を巡って争っているものだとばかり思っていたのだが。
「ウルド様は、変わっていますね……」
「そうでしょうか? ええ、そうなのでしょうね。確かに僕は、変わり者といえるかもしれません」
「まあ、私はそんな変わり者であるあなたのおかげで助かった訳ですが……」
ウルド様は、はっきりと言って変わり者である。
木の上に登ったりするし、その言動は予想がつかない。天才肌とでもいうのだろうか。少々自由奔放な所がある。
ただ彼のそういう部分に、私は助けられてきた。だからだろうか、そんな彼の気質が私には心地よく思える。
「というか、マルテリア嬢の方こそよかったんですか? 僕なんかと婚約して」
「……ええ、よかったと思っています。ウルド様は変わっていますが、尊敬できる方ですから」
「僕にそういうことを言うあなたも、充分に変わり者であると思いますけどね」
私の言葉に、ウルド様は笑っていた。
しかし私は、彼が本当に尊敬できる人だと私は考えている。その飄々とした様まで含めて、彼は立派な紳士であるとそう思っているのだ。
「ああ、そうだ。一つ言い忘れていました」
「おや、どうかしましたか?」
「私のことは、マリーと呼んでください。親しい人は皆そう呼んでいますから」
「そうでしたか……それでは、マリー嬢ということですね?」
「ええ、それでお願いします」
そこで私とウルド様は、同時に笑い合った。
この空気が心地いい。これからも彼とは、こんな温かい日々を過ごしていこう。私はそう思うのだった。
18
お気に入りに追加
348
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
念願の婚約破棄を受けました!
新野乃花(大舟)
恋愛
オレフィス第二王子はある日、一方的に婚約者エレーナに対して婚約破棄を告げた。その瞬間エレーナは飛び上がって喜んだが、オレフィスはそれを見て彼女は壊れてしまったのだと勘違いをし、なぜ彼女が喜んだのかを考えもしなかった…。
※カクヨムにも投稿しています!
離縁した旦那様が、後悔の手紙を送ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
乱暴な言葉を繰り返した挙句、婚約者であるカレンの事を追放しようとしたバルデス。しかしバルデスの執事をしていたケルンはカレンに味方をしたため、バルデスは逆追放される形で自らの屋敷を追われる。
その後しばらくして、カレンのもとに一通の手紙が届けられる。差出人はほかでもない、バルデスであった…。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる