私との婚約を破棄したあなたは、国王になるべき人ではありませんよね?

木山楽斗

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5.突然の宣告

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 程なくして私は、イルヴァン様に呼び出されることになった。
 婚約に関して、重要な話がある。そういう手紙が、私の元に送られてきたのだ。
 とりあえず私は、彼の要求に応じて王城にやって来た。そんな私に彼が告げてきたのは、驚くべきことである。

「実はあなたとは婚約破棄したいと思っている」
「な、なんですって?」

 婚約破棄、まさかそんなことを言われると思っていなかった私は、かなり動揺していた。
 事件のことを探っていた訳でもないし、今回の呼び出しはそれに関することではないと思っていた。その予想は外れていなかった訳だが、予想外の方向から殴られた気分だ。

「婚約破棄なんて、急にどうして?」
「端的に言わせてもらうと、あなたとは合わないと思ったんだ」
「合わない?」
「性格の話だよ。あなただって、薄々感じているんじゃないか?」
「そ、それは……」

 イルヴァン様からの問いかけに、私は思わず言葉を詰まらせていた。
 すると彼は、笑みを浮かべる。それによって気付いた。今のがある種の誘導だったのだということに。

「やはりそう思っていた訳か……」
「い、いえ、今のは……」
「安心したまえ、別に怒っているという訳ではない。ただ単純に、自分の判断が間違っていなかったということを確認できたことが嬉しかったというだけだ」

 イルヴァン様は、本当に嬉しそうにしていた。
 それだけ、私との婚約を破棄したかったということなのだろうか。彼の態度に、私は少しだけ違和感を覚えていた。
 ただ、それを指摘することはできなかった。上手く考えをまとめられる程、私は冷静ではなかったのだ。

「まあ、父上や叔父上には僕の方から事情を伝えよう。これは僕の個人的な感情によって起こる婚約破棄だ。それにあなたが責任を感じる必要はない」
「そ、そうですか……」
「少しの間ではあったが、これまでご苦労だった……これからあなたは、自分の好きなように生きればいい」
「……はい」

 イルヴァン様の態度を奇妙に思いながらも、私は彼の言葉に頷いた。
 なんというか、彼は気持ち悪いくらいに殊勝な態度である。私は、それに対しても引っかかりを覚えていた。
 私が考えている通りなら、彼はもっと悪辣な人間であるはずだ。これらの言葉の裏にも、何かしらの思惑が隠れているのではないだろうか。

「えっと……私は、これで失礼させてもらっても?」
「ああ、もちろん構わないが」
「それでは、失礼します」

 とにかく私は、早く家に帰ろうと思っていた。
 彼とこれ以上話す必要があるという訳ではない。この場を去って、安全な実家で後のことは考えた方がいいだろう。私は、そのように考えていた。
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