七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。

木山楽斗

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21.悪魔の策略

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「あれは……」
「なっ……」

 私とレムバル様は、兵士に教えてもらったロメリア様の居場所を目にして驚愕の声をあげることになった。
 彼女は、王都にある時計塔に磔にされている。当然、王都に暮らす人達もその姿を見ている。彼女は見世物にされているのだ。

『……人間達よ。聞くがいい!』

 どうして悪魔がそのようなことをするのか、私がそう疑問に思った瞬間、辺りに悪魔の声が響いてきた。
 どうやら、私の疑問の答えは彼が聞かせてくれそうだ。

『この国の王女、ロメリアは我が手の中に落ちた。つまりこの国は、我が手に落ちたということだ!』

 悪魔の言葉に、私は彼の意図を理解した。
 要するに彼は、この国の国民の心を折ろうとしているのだろう。
 王女が落ちた。それは確かに大きなことだ。事実は色々と異なっているが、国民の心を先に折られるというのは、中々に厄介なことだ。

「あの悪魔も、中々色々と考えているようですね……」
「ええ……ですが、国民達もまだ彼の言葉を鵜呑みにはしてはいないでしょう。もっとも、このままロメリア様を救えなければ、話は別ですが……」
「そうですね。早くロメリアを助けなければ、大変なことになってしまいます」

 悪魔に先手を打たれたという事実は、あまりいいことではない。
 だが、元々ロメリア様を人質に取られている時点で良い状況ではないのだ。
 つまり、私達がやるべきことは変わらない。ロメリア様を救い、悪魔を倒す。ただそれだけのことなのだ。

「しかしラムーナさん、どうするつもりなんですか?」
「元々は隠れて後ろに回ろうと思っていたのですが、あの悪魔の位置が少々厄介ですね……あれでは、隠れて後ろに回るのも難しそうです」
「悪魔も、ラムーナさんの考えを読んでいるということですかね?」
「そうかもしれません。あちらも、人質が重要だということは理解しているでしょうから……」

 悪魔の位置取りは、奇襲が非常にし辛かった。
 普通に隠れて近づいても、かなりの確率でばれるだろう。
 つまり、なんとかして悪魔の気をそらす必要がある。しかし、それは中々に難しい。あの悪魔もそれなりの手練れだ。私以外では、気をそらすのも困難であるだろう。

「……困っているみたいね」
「え?」

 そんな私は、自分に声をかけてきた人物に驚いた。
 その人物は、間違いなくサリーム様である。ここにいるはずがない彼女に、私は思わず固まってしまう。
 しかし、これは私にとってはとても嬉しいことだった。私と同等の実力を持つ彼女がいるならば、あの悪魔からロメリア様を救い出すことも可能かもしれない。
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