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20.繋がる視界(ディレン視点)
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少し悩んだ末に、僕は宿舎に留まることにした。
休みの連絡は、ロイドに頼んである。彼はここよく了承してくれて、僕の体調を気にかけてくれた。騙すことになってしまい、少々申し訳なかったくらいだ。
「ふぅ……」
もっとも、体調が万全という訳ではないのは事実でもある。魔力中毒の症状が、僕を悩ませているのだ。
少しずつ慣れてはいるが、意識が飛ぶ感覚はやはり辛い。あの渦は見る度に引き込まれそうになるし、色々と大変だ。
「王城の方は、どうなっているだろうか……」
昨日急にアルネシア様から連絡があった時は、とても驚いた。
改めて話してみて再度わかったが、彼女は穏やかで優しい人であるらしい。巨大な力を持ちながらも他者を労れる彼女は素晴らしい人間であるといえるだろう。
そんな彼女が閉じ込められているという現状は、理解できるが辛いものである。なんとかならないものなのだろうか。
「うぐっ……」
次の瞬間、僕は奇妙な感覚に陥った。
これは、いつもの魔力中毒の症状だろうか。一瞬そう思ったが、これはどうも違うようである。
「これは……」
僕の目の前には、部屋がある。だが、これは僕が暮らしている部屋ではない。
そして、その広い部屋は女性の部屋であるように思える。なんとなく雰囲気が、そう思えるのだ。
『……ディレンさん?』
「……その声は、アルネシア様ですか?」
『え、ええ、そうです』
「うぐっ……僕は、一体どうなって」
聞こえてきた声に、僕はその部屋がアルネシア様の部屋であると理解した。
しかし、どうして視界にその部屋が広がっているのか、どうしてアルネシア様の声が聞こえてくるのか、それがわからない。
『もしかして、繋がったんですか?』
「繋がった?」
『……恐らく、昨日私が使った魔法から私に魔法を繋げたのだと思います。いえ、繋がってしまったというべきでしょうか。ディレンさんは高度な魔力探知能力を持っているみたいですから、引っ張られたのかもしれません』
「え、えっと……」
アルネシア様の説明は、ぼんやりと理解することができた。
どうやら、僕は無意識の内に魔法を行使していたようだ。本来なら、そのような高度な魔法なんて使えないのだが、本能でそれを使ったらしい。
『とりあえず、楽にしていてください。こちらから強制的に断ち切ることもできますが、それは少々危険だと思うので、繋げておきます』
「も、申し訳ありません……」
『いえ、元はといえば、私があなたに魔法を使ったのが悪いですから』
状況が完全に理解できていないので、僕はアルネシア様の指示に従うことにした。
とにかく安静にしていよう。そう思いながら、僕はベッドの上に寝転がるのだった。
休みの連絡は、ロイドに頼んである。彼はここよく了承してくれて、僕の体調を気にかけてくれた。騙すことになってしまい、少々申し訳なかったくらいだ。
「ふぅ……」
もっとも、体調が万全という訳ではないのは事実でもある。魔力中毒の症状が、僕を悩ませているのだ。
少しずつ慣れてはいるが、意識が飛ぶ感覚はやはり辛い。あの渦は見る度に引き込まれそうになるし、色々と大変だ。
「王城の方は、どうなっているだろうか……」
昨日急にアルネシア様から連絡があった時は、とても驚いた。
改めて話してみて再度わかったが、彼女は穏やかで優しい人であるらしい。巨大な力を持ちながらも他者を労れる彼女は素晴らしい人間であるといえるだろう。
そんな彼女が閉じ込められているという現状は、理解できるが辛いものである。なんとかならないものなのだろうか。
「うぐっ……」
次の瞬間、僕は奇妙な感覚に陥った。
これは、いつもの魔力中毒の症状だろうか。一瞬そう思ったが、これはどうも違うようである。
「これは……」
僕の目の前には、部屋がある。だが、これは僕が暮らしている部屋ではない。
そして、その広い部屋は女性の部屋であるように思える。なんとなく雰囲気が、そう思えるのだ。
『……ディレンさん?』
「……その声は、アルネシア様ですか?」
『え、ええ、そうです』
「うぐっ……僕は、一体どうなって」
聞こえてきた声に、僕はその部屋がアルネシア様の部屋であると理解した。
しかし、どうして視界にその部屋が広がっているのか、どうしてアルネシア様の声が聞こえてくるのか、それがわからない。
『もしかして、繋がったんですか?』
「繋がった?」
『……恐らく、昨日私が使った魔法から私に魔法を繋げたのだと思います。いえ、繋がってしまったというべきでしょうか。ディレンさんは高度な魔力探知能力を持っているみたいですから、引っ張られたのかもしれません』
「え、えっと……」
アルネシア様の説明は、ぼんやりと理解することができた。
どうやら、僕は無意識の内に魔法を行使していたようだ。本来なら、そのような高度な魔法なんて使えないのだが、本能でそれを使ったらしい。
『とりあえず、楽にしていてください。こちらから強制的に断ち切ることもできますが、それは少々危険だと思うので、繋げておきます』
「も、申し訳ありません……」
『いえ、元はといえば、私があなたに魔法を使ったのが悪いですから』
状況が完全に理解できていないので、僕はアルネシア様の指示に従うことにした。
とにかく安静にしていよう。そう思いながら、僕はベッドの上に寝転がるのだった。
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