不出来な妹など必要ないと私を切り捨てたあなたが、今更助けを求めるなんて都合が良い話だとは思いませんか?

木山楽斗

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14.安心できるのは

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「なるほど、フリード様は暗殺者ギルドともども、レフェルトン伯爵家を追い詰めるつもりなのですか?」
「ええ、そのつもりです。そのためにも、元暗殺者の三人からは今は話を伺っています。三人とも、素直に従ってくれていますから、こちらとしては助かりますね」

 アウゼス兄さんが無事に戻って来てくれた訳だが、私の問題は完全に解決したという訳ではない。レフェルトン伯爵家が倒れる。それでやっと、完全に安心することができるのだ。
 とはいえ、そのことについて私ができることというのは、実の所何もない。その辺りに関しては、フェデルト公爵家に任せるしかないのである。
 暗殺者の三人は、色々と証言することもできるだろうが、私には特にそういったものもない。伯爵家の内情などは知らないため、微々たる情報しか私は持っていないのだ。

「しかしながら驚きましたよ。まさか、暗殺者ギルドの者達とこうして話を聞けるなんて思っていませんでしたから」
「その辺りは、エリーゼの功績です。彼女が、あの二人の心を開いたのです。スヴァールが私に従ったのも、それに無関係ではありません」
「え? そうだったのですか?」
「ああ、奴は奴なりに、あの二人のことを慕っていたらしい。そんな二人がエリーゼに従ったからこそ、説得することができたのだ」

 アウゼス兄さんの言葉に、私は少し驚いていた。
 ただ、暗殺者達には暗殺者達の中で絆があったということなのだろう。それはなんというか、少しだけ心が温かくなることであった。

「確かに、エリーゼ嬢には人を惹きつける何かがあるようですね」
「フリード様も、そう思われますか?」
「ええ、人当たりは良いですし、何よりも優しいのでしょうね。あの二人を見ていればわかります。彼らはエリーゼ嬢を信頼していた」
「そ、そうでしょうか?」
「そう思いますよ」

 フリード様は、私に対して笑顔を向けてきた。
 しかし、それはいくらなんでも褒め過ぎである気がする。私にはそんな大そうな力はない。
 きっと彼らが私のことを信頼してくれたのは、彼らが優しかったからだろう。今まで表に出せなかったものが、アウゼス兄さんに負けたことで、出るようになっただけなのではないだろうか。

「ところでアウゼスさんは、今回の件についてどう考えているのでしょうか?」
「……私としては、エリーゼの安全が第一です。彼女を守ることを何よりも優先するつもりです」
「なるほど、それは確かに明確なことですか」

 アウゼス兄さんは、フリード様の言葉に対して迷いなく返答していた。
 それは私にとっては、嬉しいことである。本当に、アウゼス兄さんは頼りになる人だ。比べるまでもないが、ダントンお兄様とは大違いである。
 そんなアウゼス兄さんと出会えたことが、私にとって一番の幸福であった。私はそれを改めて認識するのだった。
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