不出来な妹など必要ないと私を切り捨てたあなたが、今更助けを求めるなんて都合が良い話だとは思いませんか?

木山楽斗

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11.利用できるなら

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「お二人は、暗殺者ギルドに属する方々ですね?」
「……ええ、その通りです」

 フリード様の言葉に、サジェードさんは少し表情を強張らせた。
 それは、当然のことであるだろう。公爵家の令息から話題を振られて、平静でいられる訳がない。特に彼のような暗殺者なら、猶更だろう。

「驚きました。そのような方々が同伴しているなんて。まあ、お二人からは敵意のようなものは読み取れませんから、色々とあったのでしょうが」
「……まあ、ここにいる彼女に助けられたといった所です。それで心を入れ替えた、なんて綺麗なものではありませんが、とにかくエリーゼ嬢を助けるのが我々の意思です」
「なるほど……」

 フリード様の周りには、二人の屈強な男が立っている。それは護衛であるだろう。暗殺者相手に、彼は決して油断していない。
 とはいえ、二人がそのようなことをしないということも、フリード様はわかっているようだ。彼は人を見る目がある人なのだろう。

「正直な所、あなた達の存在は助かります。暗殺者ギルドというものは、なんとも許しがたいものですからね」
「それは……」
「この国のために、できれば潰したいと思っています。あなた達から情報をもらえるというなら、とてもありがたいものですね」
「……我々はどうなりますか?」

 サジェードさんは、フリード様の目をしっかりと見つめていた。
 彼が何を言おうとしているかは、わかっている。暗殺者ギルドには、最早未練も何もないだろう。その情報を見返りに、彼は自分達の保護を頼むつもりだ。
 いや、正確には少し違うかもしれない。彼の場合は、自分のことなど重要視しないだろう。どちらかというと、シェリダンさんの保護が望みであるだろう。

「情報をいただけるなら、あなた方のことには目を瞑ります。取り引きには応じますよ。もちろん、色々と内密にしてもらう必要はありますが」
「……罰を受けることを恐れている訳ではありません。弟を減刑していただけるなら、俺はどうなっても構わないと思っています」
「兄者……」
「お二人の立場は同一です。どちらかに罰を与えるということもありませんよ。そもそも僕の望みは暗殺者ギルドの撲滅です。あなた達及び所属者をどうするかは、別の話ですからね。場合によっては、こちらが利用する可能性もあります」

 フリード様は、飄々とした人でもあるらしい。
 彼は暗殺者をも、場合によっては利用しようとしている。確かに考えてみれば、手練れの暗殺者達を利用できるのはメリットにもなり得るだろう。大人しく従うというなら、寛大な措置を取る可能性もある。
 それは暗殺者達の境遇も関係しているのかもしれない。子供の頃から強制的に暗殺者にされる人達に、フリード様もある程度は同情しているのだろうか。
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