不出来な妹など必要ないと私を切り捨てたあなたが、今更助けを求めるなんて都合が良い話だとは思いませんか?

木山楽斗

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9.公爵家を目指して

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「エリーゼ嬢、あなたの兄というのは大胆な奴だな……まさか、この俺達をあなたの護衛にするなんて、どうかしている」
「といっても、サジェードさんはもう私に危害を加えるつもりなどはないのでしょう?」
「……それはそうだが」

 私は、暗殺者二人と馬車に乗っていた。アウゼス兄さんに言われた通りに、フェデルト公爵家に向かっているのである。
 公爵家が協力してくれるなんて、よく考えてみればすごいことではあるのだが、アウゼス兄さんは嘘をつくような人ではない。何かあてがあるということなのだろう。

「シェリダンさんも、サジェードさんと気持ちは同じですよね?」
「……俺は、別にお前のことを守ろうとは思っていない。ただ兄上に従っているというだけだ」

 暗殺者二人の名前は、サジェードとシェリダンというらしい。
 二人は兄弟であるそうだ。といっても、血の繋がりなどは恐らくないらしい。同じ暗殺者ギルドで育ったというだけというのが、二人の認識であるようだ。
 ただ、血の繋がりがある可能性もないという訳ではないらしい。そもそも、自分達が何者なのかも知らない二人にとって、その辺りはわからないようなのだ。

「しかし、アウゼス兄さんは大丈夫なのでしょうか?」
「それについては、俺もよくわからない。あなたの存在が力になるということも嘘ではないのだろうが、それで本当に勝てるのかどうか……」
「確か、追いかけてきている人は二人よりも手練れなのですよね?」
「ああ、俺達よりも年は下だが、実力は暗殺者ギルドでも評判だ」
「そうですか……」

 サジェードさんの言葉に、私は少し不安になった。
 これに関しても、アウゼス兄さんを信じるしかないのだが、やはり心配だ。
 せっかく会えたのに、これでお別れなんてことにはなりたくない。無事に帰って来てくれるように、私は祈っておくとしよう。

「俺は正直、アウゼスという男の実力というものをそこまで把握していない。正直な所、その辺りのことはわからない。兄者、本当に大丈夫なのか?」
「奴が大丈夫と言ったのだから、その言葉を信じるしかあるまい。手負いの俺達がともに戦った所で、足手纏いになるだけだ。奴は俺達を壁に使えるような男でもない。庇われながら戦って、そのまま負けるのが落ちだ」
「……任せるしかないという訳か」

 これからどうするべきかは、色々と考えなければならない。
 ダントンお兄様は、そう簡単に諦めてくれはしないだろう。その辺りは、フェデルト公爵家になんとかしてもらえるか掛け合ってみるしかないかもしれない。
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