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第39話 新たなる入部希望者
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私とレティは、いつも通り学校に来ていた。
いつものように授業を受けて、気づけば放課後だ。
「レティ、今日はどうする?」
「え? 何がですか?」
「部活だよ? 昨日は行かないと言っていたけど……」
「ああ……」
私の質問に、レティは目を丸くする。
もしかして、部活の存在をもう忘れてしまったのだろうか。
「なんというか、行くものだと勝手に判断していました。そういえば、昨日行ったんですから、別に今日行く必要はありませんね」
「レティ……?」
レティの発言に、私は驚いていた。
レティが、部活に自然に行くと思っていたなんて、すごいことだ。
それは、無意識のことである。つまり、レティは昨日の成功体験で、部活を楽しく思ったということだろう。
「ううっ……」
「お、お姉様? 何故、泣くんですか?」
「だ、だって……レティが、成長したと思って……」
そのことに、私は感動していた。
長年、部屋に籠ってばかりだったレティが、積極的に行動する。そのことが、私は涙が出る程嬉しいのだ。
「な、なんだか失礼ではないですか? いや、まあ自覚はありますけど……というか、そんなに感動することなんですか?」
「うん……」
これを聞いたら、お兄様もきっと喜ぶだろう。
今日帰ったら、真っ先に伝えたい。
レティにはわからないかもしれないが、私やお兄様にとって、この一歩はとても喜ばしいものなのだ。
「とりあえず、部活に行こうか? レティも、楽しみにしていた部活に……」
「い、いえ、話を聞いて行きたくなくなりました。今日は、帰りましょう」
「そんなこと言わずに……」
「いや、何を素直じゃないなあ、みたいな顔をしているんですか? 私は、行きたくありませんよ」
私のせいで、レティは素直になれなくなってしまった。
それで、部活に行かないのは、とても悲しいことだ。
そのため、私はレティの手を引き、家庭科室へと連れていくのだった。
◇◇◇
私はレティを連れて、家庭科室の前まで来ていた。
すると、そこに一人の女生徒がいる。
「あれ? まだ見ぬもう一人の先輩でしょうか?」
「違うよ、レティ。あれは同じクラスのプリネさんだよ」
「え?」
私は、その顔に見覚えがあった。
なぜなら、同じクラスの生徒だからだ。
名前は、プリネさん。確か、平民の生まれだったはずだ。
「お姉様、クラスの人の顔を名前、覚えているんですか?」
「うん、覚えているよ」
「えぇ、そんな役に立ちそうもない知識を……」
「役に立たない訳ではないよ。今、こうして役に立っているし……」
私はレティを連れて、プリネさんの元に行く。
すると、彼女は驚いたように目を丸める。
「あ、ルリア様に、レティ様……?」
「プリネさん、家庭科室に……いえ、家庭科部に何か用があるのでしょうか?」
「あ、はい……」
私の質問に、プリネさんはゆっくりと頷いた。
どうやら、家庭科部に用があるらしい。もしかして、入部希望者だろうか。
そうだとしたら、トルカやティアナさんも喜んでくれる。
「もしかして、入部ですか?」
「え、あ、はい……でも、入る勇気が出なくて……」
「大丈夫ですよ。気軽に入ればいいのです」
「き、気軽に……?」
「ええ……」
私はプリネさんの前に立って、ゆっくりと戸を叩く。
「あ、どうぞ」
すると、中から声が返ってくる。それは、トルカの声だ。
「プリネさん、入りましょうか?」
「え、あ、はい……」
プリネさんが頷いてから、私はゆっくりと戸を開ける。
すると、中にはトルカとティアナさんが既に来ていた。
「あれ? 誰?」
「あら? もしかして、入部希望者かしら?」
二人は、プリネさんを見て少し驚く。
その視線には、期待の感情が見えてくる。
「あ……」
一方、プリネさんはまだ緊張しているようだ。
ここは、私が説明した方が、いいかもしれない。
「はい、そうみたいです」
「へえ、それは嬉しいね」
「どうぞ、こちらに座って」
「あ、はい……」
私の言葉に、二人はとても嬉しそうな笑顔を見せる。
その笑顔は、プリネさんの緊張を少しだけ解いてくれたようだ。少しだけ、余裕が出てきたように見える。
言われた通り、プリネさんはティアナさんの隣に座った。これなら、後は大丈夫だろう。
「ようこそ、家庭科部へ。私はトルカ、そっちはティアナ。あなたの名前は?」
「プ、プリネです……」
「プリネさんか、よろしくね」
座ったプリネさんに、トルカは早速自己紹介を始める。
トルカは基本的に、人と打ち解けるのが早い。きっと、プリネさんもその態度には安心できるだろう。
こうして、私達は新たな入部希望者を迎えるのだった。
いつものように授業を受けて、気づけば放課後だ。
「レティ、今日はどうする?」
「え? 何がですか?」
「部活だよ? 昨日は行かないと言っていたけど……」
「ああ……」
私の質問に、レティは目を丸くする。
もしかして、部活の存在をもう忘れてしまったのだろうか。
「なんというか、行くものだと勝手に判断していました。そういえば、昨日行ったんですから、別に今日行く必要はありませんね」
「レティ……?」
レティの発言に、私は驚いていた。
レティが、部活に自然に行くと思っていたなんて、すごいことだ。
それは、無意識のことである。つまり、レティは昨日の成功体験で、部活を楽しく思ったということだろう。
「ううっ……」
「お、お姉様? 何故、泣くんですか?」
「だ、だって……レティが、成長したと思って……」
そのことに、私は感動していた。
長年、部屋に籠ってばかりだったレティが、積極的に行動する。そのことが、私は涙が出る程嬉しいのだ。
「な、なんだか失礼ではないですか? いや、まあ自覚はありますけど……というか、そんなに感動することなんですか?」
「うん……」
これを聞いたら、お兄様もきっと喜ぶだろう。
今日帰ったら、真っ先に伝えたい。
レティにはわからないかもしれないが、私やお兄様にとって、この一歩はとても喜ばしいものなのだ。
「とりあえず、部活に行こうか? レティも、楽しみにしていた部活に……」
「い、いえ、話を聞いて行きたくなくなりました。今日は、帰りましょう」
「そんなこと言わずに……」
「いや、何を素直じゃないなあ、みたいな顔をしているんですか? 私は、行きたくありませんよ」
私のせいで、レティは素直になれなくなってしまった。
それで、部活に行かないのは、とても悲しいことだ。
そのため、私はレティの手を引き、家庭科室へと連れていくのだった。
◇◇◇
私はレティを連れて、家庭科室の前まで来ていた。
すると、そこに一人の女生徒がいる。
「あれ? まだ見ぬもう一人の先輩でしょうか?」
「違うよ、レティ。あれは同じクラスのプリネさんだよ」
「え?」
私は、その顔に見覚えがあった。
なぜなら、同じクラスの生徒だからだ。
名前は、プリネさん。確か、平民の生まれだったはずだ。
「お姉様、クラスの人の顔を名前、覚えているんですか?」
「うん、覚えているよ」
「えぇ、そんな役に立ちそうもない知識を……」
「役に立たない訳ではないよ。今、こうして役に立っているし……」
私はレティを連れて、プリネさんの元に行く。
すると、彼女は驚いたように目を丸める。
「あ、ルリア様に、レティ様……?」
「プリネさん、家庭科室に……いえ、家庭科部に何か用があるのでしょうか?」
「あ、はい……」
私の質問に、プリネさんはゆっくりと頷いた。
どうやら、家庭科部に用があるらしい。もしかして、入部希望者だろうか。
そうだとしたら、トルカやティアナさんも喜んでくれる。
「もしかして、入部ですか?」
「え、あ、はい……でも、入る勇気が出なくて……」
「大丈夫ですよ。気軽に入ればいいのです」
「き、気軽に……?」
「ええ……」
私はプリネさんの前に立って、ゆっくりと戸を叩く。
「あ、どうぞ」
すると、中から声が返ってくる。それは、トルカの声だ。
「プリネさん、入りましょうか?」
「え、あ、はい……」
プリネさんが頷いてから、私はゆっくりと戸を開ける。
すると、中にはトルカとティアナさんが既に来ていた。
「あれ? 誰?」
「あら? もしかして、入部希望者かしら?」
二人は、プリネさんを見て少し驚く。
その視線には、期待の感情が見えてくる。
「あ……」
一方、プリネさんはまだ緊張しているようだ。
ここは、私が説明した方が、いいかもしれない。
「はい、そうみたいです」
「へえ、それは嬉しいね」
「どうぞ、こちらに座って」
「あ、はい……」
私の言葉に、二人はとても嬉しそうな笑顔を見せる。
その笑顔は、プリネさんの緊張を少しだけ解いてくれたようだ。少しだけ、余裕が出てきたように見える。
言われた通り、プリネさんはティアナさんの隣に座った。これなら、後は大丈夫だろう。
「ようこそ、家庭科部へ。私はトルカ、そっちはティアナ。あなたの名前は?」
「プ、プリネです……」
「プリネさんか、よろしくね」
座ったプリネさんに、トルカは早速自己紹介を始める。
トルカは基本的に、人と打ち解けるのが早い。きっと、プリネさんもその態度には安心できるだろう。
こうして、私達は新たな入部希望者を迎えるのだった。
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