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78.私のお姉様(エルメラ視点)
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「おはようございます、お姉様。今日もお美しいですね?」
「ありがとう、エルメラ。ただ、朝一番に顔を合わせて、褒め称えられるなんて驚いてしまうわ」
「そうですか。でも、年々と色香も増したといいますか、どんどんと魅力的になられているお姉様を見ていると、心がなんだか沸き立ってきます」
「そう……そうなのね」
私の言葉に、お姉様は頭を抱えていた。
そういう風に少し憂いを見せた表情も美しい。この場面を切り取って額縁に入れて飾ってもいいくらいだ。
いや、それを躊躇う必要などないだろう。魔法で写真に収めておくとしよう。
「エルメラ、今魔法を使おうとしたわね?」
「あ、ばれてしまいましたか?」
「盗撮はやめてと言っているでしょうに」
「でも、撮りたいと言ってしまったら、お姉様の真の姿を後世に残せないではありませんか」
「残さなくていいから、少なくともこんな朝のみっともない表情は」
お姉様は、自分の魅力をあまり理解していないのだろうか。
これを後世に残せないなんて、人類にとっての損失だ。もしもお姉様が朝起きてどのような美しい顔をしていたかがわからず、それを発端に人類が戦争を始めてその結果が世界が滅びたら、どうするのだろうか。
ただ、そういう自分の美しさに無頓着である所もお姉様の魅力といえる。つまり世界を救うためには、私がお姉様の姿をこっそりと記録するしかない。
「はあ……あなたの本心を知った時は驚いたものだけれど、不機嫌そうな顔をしていた時も、裏ではずっとそんな感じだったのかしら?」
「え? まあ、概ねは……」
「知った時は嬉しかったのだけれどね。段々とちょっと度を越していると思い始めて、年を取れば落ち着くと思ったら、これだもの。もうどうしていいのかわからなくなってしまうわ」
「どうしていいかなんて、そんなのは簡単です。お姉様は、私のことを抱きしめてくださればいいのです」
「……話が繋がっていないのだけれど」
年月が経つにつれて、私も本心を隠す必要がないと思い始めた。
お姉様も力を身に着けたし、それを差し引いても私がお姉様を守れる程の力を身に着けていた。となると、敢えて嫌っているような振りはしなくても良いのである。
という訳である時打ち明けてみたのだが、お姉様は快く受け入れてくれた。その時に言われたことは、今でもよく覚えている。
「お姉様は、私に本心を隠す必要なんてないと仰ってくださいました。甘えたい時には甘えさせてくれると言いました。その時の録音だってありますよ」
「……我ながら余計なことばかり言ってしまったみたいね」
「そんな!」
「まあ、そういうことなら仕方ないのかしらね? いやでも、流石にこの年齢でこの年齢の妹を甘やかすのは……」
「愛に年齢など関係ありません!」
お姉様は私のお姉様なので、家族愛は強い人だ。
だからこのまま押していけば、きっと甘やかしてくれる。
それはもしかしたら、他者から見れば厳しい光景かもしれない。でも、ここは私達の家で他人の目なんてないのだから、大丈夫だ。安心して、私に膝枕とかしてもらいたい。
「ありがとう、エルメラ。ただ、朝一番に顔を合わせて、褒め称えられるなんて驚いてしまうわ」
「そうですか。でも、年々と色香も増したといいますか、どんどんと魅力的になられているお姉様を見ていると、心がなんだか沸き立ってきます」
「そう……そうなのね」
私の言葉に、お姉様は頭を抱えていた。
そういう風に少し憂いを見せた表情も美しい。この場面を切り取って額縁に入れて飾ってもいいくらいだ。
いや、それを躊躇う必要などないだろう。魔法で写真に収めておくとしよう。
「エルメラ、今魔法を使おうとしたわね?」
「あ、ばれてしまいましたか?」
「盗撮はやめてと言っているでしょうに」
「でも、撮りたいと言ってしまったら、お姉様の真の姿を後世に残せないではありませんか」
「残さなくていいから、少なくともこんな朝のみっともない表情は」
お姉様は、自分の魅力をあまり理解していないのだろうか。
これを後世に残せないなんて、人類にとっての損失だ。もしもお姉様が朝起きてどのような美しい顔をしていたかがわからず、それを発端に人類が戦争を始めてその結果が世界が滅びたら、どうするのだろうか。
ただ、そういう自分の美しさに無頓着である所もお姉様の魅力といえる。つまり世界を救うためには、私がお姉様の姿をこっそりと記録するしかない。
「はあ……あなたの本心を知った時は驚いたものだけれど、不機嫌そうな顔をしていた時も、裏ではずっとそんな感じだったのかしら?」
「え? まあ、概ねは……」
「知った時は嬉しかったのだけれどね。段々とちょっと度を越していると思い始めて、年を取れば落ち着くと思ったら、これだもの。もうどうしていいのかわからなくなってしまうわ」
「どうしていいかなんて、そんなのは簡単です。お姉様は、私のことを抱きしめてくださればいいのです」
「……話が繋がっていないのだけれど」
年月が経つにつれて、私も本心を隠す必要がないと思い始めた。
お姉様も力を身に着けたし、それを差し引いても私がお姉様を守れる程の力を身に着けていた。となると、敢えて嫌っているような振りはしなくても良いのである。
という訳である時打ち明けてみたのだが、お姉様は快く受け入れてくれた。その時に言われたことは、今でもよく覚えている。
「お姉様は、私に本心を隠す必要なんてないと仰ってくださいました。甘えたい時には甘えさせてくれると言いました。その時の録音だってありますよ」
「……我ながら余計なことばかり言ってしまったみたいね」
「そんな!」
「まあ、そういうことなら仕方ないのかしらね? いやでも、流石にこの年齢でこの年齢の妹を甘やかすのは……」
「愛に年齢など関係ありません!」
お姉様は私のお姉様なので、家族愛は強い人だ。
だからこのまま押していけば、きっと甘やかしてくれる。
それはもしかしたら、他者から見れば厳しい光景かもしれない。でも、ここは私達の家で他人の目なんてないのだから、大丈夫だ。安心して、私に膝枕とかしてもらいたい。
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