3 / 18
3.仕事の指示
しおりを挟む
「えっと、それじゃあ新入りさんには庭の掃除をお願いしようかしら?」
「庭の掃除……ああ、落ち葉などを掃けばいいということですね?」
「そうそう。やっぱり見栄えが悪いからね」
柔和な表情で私に指示を出しているのは、ロローナさんというメイドだ。
メイドの中でも古参であるらしく、現場の指示などは彼女がしているらしい。
そんな彼女の命令で、私は庭の掃除をすることになった。それ程難しいことでもなさそうなので、新人に割り当てたということだろうか。
「えっと……ほうきは裏の倉庫の中に入っているから、それを使ってね。あ、風があるかもしれないから気を付けてね。せっかく掃いた落ち葉が吹き飛んじゃったら困るでしょう?」
「わかりました。気を付けます」
「あ、それと、もしかしたら来客なんかがあるかもしれないから、それも一応頭に入れておいてね。あなたが対応に当たることはないと思うけれど、会釈とかはしないといけないし、話しかけられたら受け答えも必要ね。でも難しいことを聞かれたりしたら、一言断ってから誰かを呼んでね。お客様に無礼があるのが一番いけないことだから、困ったことがあったら人を呼ぶこと」
「は、はい、そうさせていただきます」
ロローナさんは、その見た目通りの優しい人であった。庭の掃除という仕事で起こり得ることを、懇切丁寧に説明してくれている。
杞憂ともいえることまで説明してくれていることが少々気になる所ではあるが、まったく物事を知らない新人に対する対応と思えば、妥当なのかもしれない。
一応私は、貴族の令嬢であるため、客人への対応などもある程度は心得ている。そのため、万が一来客があったとしてもそこまで困ったことにはならないだろう。
もっとも、それが慢心である可能性もある。メイドという仕事を知らない以上、ロローナさんの説明をしっかりと頭に叩き込んでおいた方がいいのかもしれない。
「まあ、わからないことがあったら近くにいる先輩を見つけて聞いてくれたらいいからね。多分、大抵のことは皆わかると思うから」
「はい、わかりました」
「それじゃあ、私も自分の仕事に行くから、頑張ってね、ラナリアさん」
「……ありがとうございます、ロローナさん」
念のため、私はここでは偽名を使うことになっている。
ラナリアというのが、今の私の名前だ。呼ばれても、まだ少しピンとこないが、まあそれはその内慣れてくるだろう。
そんなことを考えながら、私は仕事場である庭に向かうのだった。
「庭の掃除……ああ、落ち葉などを掃けばいいということですね?」
「そうそう。やっぱり見栄えが悪いからね」
柔和な表情で私に指示を出しているのは、ロローナさんというメイドだ。
メイドの中でも古参であるらしく、現場の指示などは彼女がしているらしい。
そんな彼女の命令で、私は庭の掃除をすることになった。それ程難しいことでもなさそうなので、新人に割り当てたということだろうか。
「えっと……ほうきは裏の倉庫の中に入っているから、それを使ってね。あ、風があるかもしれないから気を付けてね。せっかく掃いた落ち葉が吹き飛んじゃったら困るでしょう?」
「わかりました。気を付けます」
「あ、それと、もしかしたら来客なんかがあるかもしれないから、それも一応頭に入れておいてね。あなたが対応に当たることはないと思うけれど、会釈とかはしないといけないし、話しかけられたら受け答えも必要ね。でも難しいことを聞かれたりしたら、一言断ってから誰かを呼んでね。お客様に無礼があるのが一番いけないことだから、困ったことがあったら人を呼ぶこと」
「は、はい、そうさせていただきます」
ロローナさんは、その見た目通りの優しい人であった。庭の掃除という仕事で起こり得ることを、懇切丁寧に説明してくれている。
杞憂ともいえることまで説明してくれていることが少々気になる所ではあるが、まったく物事を知らない新人に対する対応と思えば、妥当なのかもしれない。
一応私は、貴族の令嬢であるため、客人への対応などもある程度は心得ている。そのため、万が一来客があったとしてもそこまで困ったことにはならないだろう。
もっとも、それが慢心である可能性もある。メイドという仕事を知らない以上、ロローナさんの説明をしっかりと頭に叩き込んでおいた方がいいのかもしれない。
「まあ、わからないことがあったら近くにいる先輩を見つけて聞いてくれたらいいからね。多分、大抵のことは皆わかると思うから」
「はい、わかりました」
「それじゃあ、私も自分の仕事に行くから、頑張ってね、ラナリアさん」
「……ありがとうございます、ロローナさん」
念のため、私はここでは偽名を使うことになっている。
ラナリアというのが、今の私の名前だ。呼ばれても、まだ少しピンとこないが、まあそれはその内慣れてくるだろう。
そんなことを考えながら、私は仕事場である庭に向かうのだった。
86
お気に入りに追加
672
あなたにおすすめの小説


田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。
冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。
本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。
ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。
隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。
「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」
どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?


妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる