辺境の薬師は隣国の王太子に溺愛されています。

木山楽斗

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16.次期王妃として

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 私とギルーゼ殿下の結婚は、二国の間で祝福される出来事であった。
 もちろん、内心人々がどう思っているかは定かではないのだが、それでも多くの国民は私達の結婚を喜んでいるようだ。

「当然といえば当然だ。君は人格者であり優れた薬師なのだからな」
「……仮にそうだとしても、多くの人達は私のことなんてそんなに知らないと思いますけれど」

 王太子の結婚ということもあって、挙式は後日盛大に行われる。
 そこには、二国の重鎮達が訪れるだろう。それを考えると、今から少し億劫だ。
 とはいえ、次期国王の妻になるのだから、その辺りは覚悟を決めるべきことだろう。

「まあそもそも、ギルーゼ殿下やクルセルド殿下が国民から慕われる王族であるということが、要因なのではありませんか?」
「む……」
「王族の方々が慕われていなければ、国民も湧いたりはしないと思います。そういった意味において、ギルーゼ殿下やクルセルド殿下は素晴らしい方々ということでしょう」

 とりあえず国民に祝福されていることは、私にとって嬉しいことだった。
 隣国の薬師でしかない私でも、クルセルド殿下を助けたという事実によって、国民達は納得してくれている。後は私が、失望されるような振る舞いをしないようにするだけだ。

「君にそう言ってもらえるのは嬉しいものだな」
「ギルーゼ殿下……」
「君のことが愛おしい。妻として迎え入れられたことを、とても嬉しく思っている」
「嬉しく思っているのは、私も同じです」

 ギルーゼ殿下は、私のことをそっと抱き寄せてきた。
 結婚を受け入れてから、私と彼はそうやって身を寄せ合っている。こうしていると、なんとも幸せな気持ちになれるからだ。

「ああそうだ。君に一つ頼みがある」
「頼み? 何ですか?」
「薬師のことだ。君にはこれからも、その技術を高めてもらいたい。そしてその技術を伝えていって欲しいのだ」
「薬師の技術を、ですか?」
「君は最後の薬師などと言われているが、これからの時代にも絶対に薬師は必要になってくる。そのためにも、その技術は継承していくべきだ」

 私は、ギルーゼ殿下の言葉に固まっていた。
 自分が薬師の技術を伝えていく。それは今まで、考えていなかったことではない。
 かつての祖母のように、私も薬師になりたいと思う誰かの師となる。漠然と考えていたそのことが実現するとなると、少し緊張してしまう。

「心配ない。君なら大丈夫だ」
「ギルーゼ殿下……」
「君はクルセルドを救ってくれた。その技術には一点も疑う余地はない。師としての素質なども、偉大なる祖母から学んでいる。そうだろう?」
「……ええ、そうですね」

 私の緊張を察したのか、ギルーゼ殿下はとても温かい言葉をかけてくれた。
 その言葉に、私の緊張は解けた。根拠などはまったくないのだが、何故か自信を持つことができる。
 こうして私は、頼りになる夫とともに歩んでいくことになった。時期王妃として、そして薬師として、これからも頑張っていくとしよう。
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