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3.薬師の見解
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「……薬というものには、時には魔物の血や肉が必要になるものです。特に解毒などの分野においては、その毒をもたらした生物の何かを使うことが多いのです」
「今回の場合も、そうだということか……しかし古代の魔物の血なんて」
「ええ、現存しているかは怪しい所です」
ギルーゼ殿下は、私の言葉に頭を抱えていた。
無礼でないなら、私もそうしたいくらいだ。王族の前で、こんなことを言うなんて、正直肝が冷える。
しかし、嘘をついたって仕方ない。というかその方がまずいだろう。
「薬師として、素材があれば石化を解く薬を作ることができると思っています。調合自体は、難しいものではありません。念のため文献を漁って、詳しく調べ直す必要はあると思いますが」
「……そう言っていただけるだけでも、我々にとっては希望だ。父上、ここは博物館などをあたりましょう。もしかしたら、何か残っているかもしれません」
「ギルーゼ、もちろんそうするつもりだ。しかしアラーシャ殿は、まだ言いたいことがありそうだ。とりあえず、落ち着け」
ギルーゼ殿下の言葉に、国王様はゆっくりとした口調で言葉を返した。
王太子様と違って、国王様からは感情が読み取れない。私の言葉に対して、父親である彼は何を思っているのだろうか。それは少々気になる所だ。
「アラーシャ、あなたは他にも何か思いついているのか?」
「はい……もう一つの手として、私が新たに薬を開発するというものがあります」
「開発……できるのか?」
「可能性はゼロではありません。薬師は、状況に応じて新薬を開発するものですから。とはいえ、これには時間がかかるかと……」
「ふむ……」
私の言葉に、ギルーゼ殿下は考えるような仕草を見せた。
正直言って、薬を新たに開発するのはとても難しい。石化の正確な原因などがわかれば話は別だが、現状はわからないことが多すぎる。
「クルセルド殿下は、一体どのような状況で今のようになっているのですか? 新薬を開発するなら、少しでも手がかりが欲しいと思うのですが……」
「それについては、詳しくはわからない。弟は自室で固まっていたのだ。朝部屋から中々出て来ないということで、様子を見に行かせたら、そうなっていた」
「朝、自室……そうですか」
薬の材料に使うため、私には魔物の知識もそれなりにある。
よって状況から、どのような魔物に襲われたかもわかるかと思ったのだが、それも無理そうだ。
「……とにかく、アラーシャ殿。そなたには、我が息子のために動いてもらいたい。それについて、同意してもらえるだろうか?」
「ええ、それはもちろんです」
国王様から投げかけられた言葉に、私はゆっくりと頷いた。
困っている人を助けるのが、薬師の仕事だ。故に迷いはなかった。私は今回の事件を、解決してみせるのだ。
「今回の場合も、そうだということか……しかし古代の魔物の血なんて」
「ええ、現存しているかは怪しい所です」
ギルーゼ殿下は、私の言葉に頭を抱えていた。
無礼でないなら、私もそうしたいくらいだ。王族の前で、こんなことを言うなんて、正直肝が冷える。
しかし、嘘をついたって仕方ない。というかその方がまずいだろう。
「薬師として、素材があれば石化を解く薬を作ることができると思っています。調合自体は、難しいものではありません。念のため文献を漁って、詳しく調べ直す必要はあると思いますが」
「……そう言っていただけるだけでも、我々にとっては希望だ。父上、ここは博物館などをあたりましょう。もしかしたら、何か残っているかもしれません」
「ギルーゼ、もちろんそうするつもりだ。しかしアラーシャ殿は、まだ言いたいことがありそうだ。とりあえず、落ち着け」
ギルーゼ殿下の言葉に、国王様はゆっくりとした口調で言葉を返した。
王太子様と違って、国王様からは感情が読み取れない。私の言葉に対して、父親である彼は何を思っているのだろうか。それは少々気になる所だ。
「アラーシャ、あなたは他にも何か思いついているのか?」
「はい……もう一つの手として、私が新たに薬を開発するというものがあります」
「開発……できるのか?」
「可能性はゼロではありません。薬師は、状況に応じて新薬を開発するものですから。とはいえ、これには時間がかかるかと……」
「ふむ……」
私の言葉に、ギルーゼ殿下は考えるような仕草を見せた。
正直言って、薬を新たに開発するのはとても難しい。石化の正確な原因などがわかれば話は別だが、現状はわからないことが多すぎる。
「クルセルド殿下は、一体どのような状況で今のようになっているのですか? 新薬を開発するなら、少しでも手がかりが欲しいと思うのですが……」
「それについては、詳しくはわからない。弟は自室で固まっていたのだ。朝部屋から中々出て来ないということで、様子を見に行かせたら、そうなっていた」
「朝、自室……そうですか」
薬の材料に使うため、私には魔物の知識もそれなりにある。
よって状況から、どのような魔物に襲われたかもわかるかと思ったのだが、それも無理そうだ。
「……とにかく、アラーシャ殿。そなたには、我が息子のために動いてもらいたい。それについて、同意してもらえるだろうか?」
「ええ、それはもちろんです」
国王様から投げかけられた言葉に、私はゆっくりと頷いた。
困っている人を助けるのが、薬師の仕事だ。故に迷いはなかった。私は今回の事件を、解決してみせるのだ。
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