12 / 16
12.これからのために
しおりを挟む
「なるほど、それでお姉様はルライド様達ヴェルトン子爵家の協力を得られたのですね?」
「ええ……」
エンバラス伯爵家に戻ってきた私は、イルティアに事情を話していた。
私がヴェルトン子爵家に行っている間、彼女には別の貴族と話をしてもらっていた。故にお互いに報告しあっているのだ。
「あなたの方はどうだったの?」
「ドルベルト伯爵家のウェルーナ嬢は、レグファー様にかなりお怒りのようでした。ドルベルト伯爵は反対していましたが、本人はやる気満々でした」
「それで、結局協力は得られそうなの?」
「ええ、ドルベルト伯爵も最終的には折れていましたから」
イルティアの方も、上手くいったようである。
これなら、レグファー様を糾弾することができそうだ。二人も被害者が証言してくれば、充分であるだろう。
「ただイルティア、その前にあなたと話しておきたいことがあるの」
「あら? なんですか?」
「お父様のことよ。このままこれを乗り切ったとしても、お父様がいる限りまた同じことが起こりかねないと思うの」
「……まあ、それはそうかもしれませんね」
そこで私は、お父様に関することをイルティアに話してみることにした。
エンバラス伯爵家は、お父様に支配されている。レグファー様との婚約が破談にできたとしても、彼がいる限り私達の日常は変わらない。
故に私達は、お父様の支配から脱却するべきなのだ。今回の出来事は、そのためにも利用することができる。
「私はレグファー様と一緒に、お父様にも沈んでもらいたいと思っているわ。これは明らかに、お父様のミスだもの。それを糾弾することによって、お父様には失脚してもらうわ」
「失脚、ですか? しかしながら、お父様がミスを認めるでしょうか?」
「その辺りは、お祖父様やお祖母様に掛け合ってみたいと思うの」
「……あの二人に、ですか」
引退した先代のエンバラス伯爵夫妻は、今でも強い影響力を持っている。その二人に今回のお父様の失敗を伝えて、伯爵家の主導権が私に回って来るように根回ししておくのだ。
恐らく、あの二人ならこちらの要求を呑んでくれるはずである。厳格な人達なので、お父様の肩を特別持ったりはしないだろう。
「しかし、あの二人に掛け合う場合……というよりも、エンバラス伯爵家の主導権を握るならお姉様お一人では難しいのではありませんか?」
「結婚相手か、婚約者がいた方がいいということよね? その点に関しては問題ないわ。もう既にお願いしてあるもの」
「お願い? それは、誰に?」
「ルライド様によ」
私の言葉に、イルティアは目を丸めていた。
そんな彼女の表情に、私は笑みを浮かべるのだった。
「ええ……」
エンバラス伯爵家に戻ってきた私は、イルティアに事情を話していた。
私がヴェルトン子爵家に行っている間、彼女には別の貴族と話をしてもらっていた。故にお互いに報告しあっているのだ。
「あなたの方はどうだったの?」
「ドルベルト伯爵家のウェルーナ嬢は、レグファー様にかなりお怒りのようでした。ドルベルト伯爵は反対していましたが、本人はやる気満々でした」
「それで、結局協力は得られそうなの?」
「ええ、ドルベルト伯爵も最終的には折れていましたから」
イルティアの方も、上手くいったようである。
これなら、レグファー様を糾弾することができそうだ。二人も被害者が証言してくれば、充分であるだろう。
「ただイルティア、その前にあなたと話しておきたいことがあるの」
「あら? なんですか?」
「お父様のことよ。このままこれを乗り切ったとしても、お父様がいる限りまた同じことが起こりかねないと思うの」
「……まあ、それはそうかもしれませんね」
そこで私は、お父様に関することをイルティアに話してみることにした。
エンバラス伯爵家は、お父様に支配されている。レグファー様との婚約が破談にできたとしても、彼がいる限り私達の日常は変わらない。
故に私達は、お父様の支配から脱却するべきなのだ。今回の出来事は、そのためにも利用することができる。
「私はレグファー様と一緒に、お父様にも沈んでもらいたいと思っているわ。これは明らかに、お父様のミスだもの。それを糾弾することによって、お父様には失脚してもらうわ」
「失脚、ですか? しかしながら、お父様がミスを認めるでしょうか?」
「その辺りは、お祖父様やお祖母様に掛け合ってみたいと思うの」
「……あの二人に、ですか」
引退した先代のエンバラス伯爵夫妻は、今でも強い影響力を持っている。その二人に今回のお父様の失敗を伝えて、伯爵家の主導権が私に回って来るように根回ししておくのだ。
恐らく、あの二人ならこちらの要求を呑んでくれるはずである。厳格な人達なので、お父様の肩を特別持ったりはしないだろう。
「しかし、あの二人に掛け合う場合……というよりも、エンバラス伯爵家の主導権を握るならお姉様お一人では難しいのではありませんか?」
「結婚相手か、婚約者がいた方がいいということよね? その点に関しては問題ないわ。もう既にお願いしてあるもの」
「お願い? それは、誰に?」
「ルライド様によ」
私の言葉に、イルティアは目を丸めていた。
そんな彼女の表情に、私は笑みを浮かべるのだった。
21
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
旦那様に勝手にがっかりされて隣国に追放された結果、なぜか死ぬほど溺愛されています
新野乃花(大舟)
恋愛
17歳の少女カレンは、6つほど年上であるグレムリー伯爵から婚約関係を持ち掛けられ、関係を結んでいた。しかしカレンは貴族でなく平民の生まれであったため、彼女の事を見る周囲の目は冷たく、そんな時間が繰り返されるうちに伯爵自身も彼女に冷たく当たり始める。そしてある日、ついに伯爵はカレンに対して婚約破棄を告げてしまう。カレンは屋敷からの追放を命じられ、さらにそのまま隣国へと送られることとなり、しかし伯爵に逆らうこともできず、言われた通りその姿を消すことしかできなかった…。しかし、彼女の生まれにはある秘密があり、向かった先の隣国でこの上ないほどの溺愛を受けることとなるのだった。後からその事に気づいた伯爵であったものの、もはやその時にはすべてが手遅れであり、後悔してもしきれない思いを感じさせられることとなるのであった…。
絶縁書を出されて追放された後に、王族王子様と婚約することになりました。…え?すでに絶縁されているので、王族に入るのは私だけですよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
セレシアは幼い時に両親と離れ離れになり、それ以降はエルクという人物を父として生活を共にしていた。しかしこのエルクはセレシアに愛情をかけることはなく、むしろセレシアの事を虐げるためにそばに置いているような性格をしていた。さらに悪いことに、エルクは後にラフィーナという女性と結ばれることになるのだが、このラフィーナの連れ子であったのがリーゼであり、エルクはリーゼの事を大層気に入って溺愛するまでになる。…必然的に孤立する形になったセレシアは3人から虐げ続けられ、その果てに離縁書まで突き付けられて追放されてしまう。…やせ細った体で、行く当てもなくさまようセレシアであったものの、ある出会いをきっかけに、彼女は妃として王族の一員となることになる…!
※カクヨムにも投稿しています!
バッドエンド確定の悪役令嬢に転生してしまったので、好き勝手しようと思います
新野乃花(大舟)
恋愛
日本で普通の生活を送っていた私は、気が付いたらアリシラ・アーレントという名前の悪役令嬢になってしまっていた。過去には気に入らない他の貴族令嬢に嫌がらせをしたり、国中の女性たちから大人気の第一王子を誘惑しにかかったりと、調べれば調べるほど最後には正ヒロインからざまぁされる結末しか見えない今の私。なので私はそういう人たちとの接点を絶って、一人で自由にのびのびスローライフを楽しむことにした……はずだったのに、それでも私の事をざまぁさせるべく色々な負けフラグが勝手に立っていく…。行くも戻るもバッドエンド確定な私は、この世界で生き抜くことができるのでしょうか…?
第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、婚約破棄でも構いませんよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ルメル第一王子は貴族令嬢のサテラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるシンシアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、シンシアがサテラからいじめられたという話をでっちあげてはルメルに泣きつき、ルメルはサテラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルメルはサテラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。
契約婚しますか?
翔王(とわ)
恋愛
クリスタ侯爵家の長女ミリアーヌの幼なじみで婚約者でもある彼、サイファ伯爵家の次男エドランには愛してる人がいるらしく彼女と結ばれて暮らしたいらしい。
ならば婿に来るか子爵だけど貰うか考えて頂こうじゃないか。
どちらを選んでも援助等はしませんけどね。
こっちも好きにさせて頂きます。
初投稿ですので読みにくいかもしれませんが、お手柔らかにお願いします(>人<;)
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです
泉花ゆき
恋愛
ある日のこと。
マリアンヌは婚約者であるビートから「派手に着飾ってばかりで財をひけらかす女はまっぴらだ」と婚約破棄をされた。
ビートは、マリアンヌに、ロコという娘を紹介する。
シンプルなワンピースをさらりと着ただけの豪商の娘だ。
ビートはロコへと結婚を申し込むのだそうだ。
しかし伯爵令嬢でありながら商品の目利きにも精通しているマリアンヌは首を傾げる。
ロコの着ているワンピース、それは仕立てこそシンプルなものの、生地と縫製は間違いなく極上で……つまりは、恐ろしく値の張っている服装だったからだ。
そうとも知らないビートは……
※ゆるゆる設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる