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13.恐ろしいのは(ランバス視点)

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「はあ、はあ……」

 ランバスは、修練の穴の中で見つけた洞窟に籠っていた。
 気候の変化はともかくとして、環境の変化はそこなら防げる。そう思ったランバスは、そこを拠点として行動をしていた。
 その洞窟の中で、彼は震えていた。言い知れぬ恐怖に、襲われていたのだ。

「修練の穴は、環境の変化が恐ろしい場所であると思っていた……でも違ったんだ。本当に恐ろしいのは、そんなことじゃない。僕はこの修練場のことを、勘違いしていたんだ……」

 ランバスは、誰に話しかける訳でもなくぽつぽつとそう呟いていた。
 それは彼にとっては、自らの精神を保つためのものだった。彼は自分に話しかけることによって、恐怖を抑えつけているのだ。

「誰かに会いたい……誰でもいい。例え、あのフェリティアであっても、今の僕は歓喜するだろう。誰でもいいんだ。とにかく人に会いたい。水も食料も必要ない。そんなことよりも、人に会いたい……」

 ランバスは、孤独に苦しんでいた。
 修練の穴には、彼しかいない。彼以外にも入っている人はいるはずなのだが、誰にも会わないのである。
 そのことが何より、ランバスを苦しめていた。誰かに会いたい。その気持ちが、ランバスの中ではどんどんと膨れ上がっていた。

「一体、この修練の穴はいつまで続くんだ? そもそももう僕は、一か月以上飲まず食わずだというのに……どうして、生きているんだ?」

 ほとんど飲まず食わずの生活の中で、ランバスは渇きや空腹に苦しんでいた。
 その苦しみは、いつまでも収まらない。彼には決して、終わりが訪れないのだ。
 ランバスは、それこそが修練の穴の最も恐ろしい部分であることに気付いていた。決して終わらない苦痛の日々に、彼は絶望していた。

「後何日続くんだ。確か一年は出て来られないと聞いていたが……果たして一年間、持つのだろうか?」

 孤独に震えながら、ランバスは涙を流していた。
 このまま一年間、ずっとここで過ごす。彼はそれが本当に怖かったのだ。

「父上は、どうして僕にこんな仕打ちを……僕が悪かったのか? いや、そんなはずはない。悪いのはフェリティアだ……いや、僕が悪かったのか?」

 ランバスは、ひたすら自問自答していた。
 ここに来たのは、どうしてなのだろうか。彼は、ずっとそのことについて考えていた。
 他にやることもないため、何度も結論を出しては考え直すということを繰り返していたのだ。
 そうしてランバスは再び思考を開始する。結局彼は、考えては考え直すことを繰り返し続けるのだった。
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