9 / 17
9.私の選択
しおりを挟む
「あなたが、提案を受け入れてくれて安心しました」
「安心、ですか?」
「ええ、正直な所、この婚約を受け入れてもらえるかどうかは少々自信がなかったものですからね……やはり、文化所か種族も違う国に行くのは難しいことでしょう」
馬車の中で、レオニア様は私にそんなことを言ってきた。
結局私は、婚約を受け入れることにした。色々と考えた結果、それが一番いいと思ったのだ。
この婚約はバルティアス侯爵家に大きな利益をもたらすことになる。大役を背負うことになるが、その分利益も大きいのだ。
それをみすみす手放すことはない。獣人とは分かり合えるということは、レオニア様と話してわかっていたし、私はこの提案を受け入れるべきだと思ったのだ。
「……さて、そんなあなたに一つお願いしたいことがあるのです」
「はい、なんですか?」
「私とあなたは、お互いに愛し合っているということにしてもらいたいのです」
そこでレオニア様は、そのようなお願いをしてきた。
その言葉の意味は、なんとなく理解できた。恐らくそれは、獣人と人間の調和に繋がることなのだろう。
「アピールということですか?」
「ええ、端的に言ってしまえばそういうことになります。契約によって婚約しているということでは、和平の証としては少々弱いですからね……」
「確かに、そうですね。種族を越えた愛というものを表現する必要があるという訳ですか」
レオニア様の提案は、かなり大事な要素であるだろう。
契約による婚約と愛し合っての婚約とでは、印象は異なってくる。二つの種族の和平のためには、後者の方が効果的であるだろう。
「でも当然、事情を邪推する人もいますよね……そういう人達も含めて納得させるためには、私とレオニア様が仲が良い様を直接見せる必要がありますか」
「そうしていただけると、こちらとしてはありがたいですね。少々恥ずかしいですが……フェリティア嬢としては、大丈夫なのですか?」
「まあ、恥ずかしさはありますが、それも役目ですからね……」
人前でそういう様を見せるというのは、中々に恥ずかしいことだ。
いやそもそもの話、レオニア様とそんな風に接するというのにも恥ずかしさがある。
本当にそんなことができるのだろうか。私は少々、不安になってきた。
「でも少し練習しておきませんか? いきなりできることではないでしょうし……」
「そうですか?」
「ええ、少しそちらに行かせてもらいますね」
とりあえず私は、対面していたレオニア様の横に腰掛けてみることにした。
今後のために、彼と触れ合うことに慣れる。そのための行動を私は開始するのだった。
「安心、ですか?」
「ええ、正直な所、この婚約を受け入れてもらえるかどうかは少々自信がなかったものですからね……やはり、文化所か種族も違う国に行くのは難しいことでしょう」
馬車の中で、レオニア様は私にそんなことを言ってきた。
結局私は、婚約を受け入れることにした。色々と考えた結果、それが一番いいと思ったのだ。
この婚約はバルティアス侯爵家に大きな利益をもたらすことになる。大役を背負うことになるが、その分利益も大きいのだ。
それをみすみす手放すことはない。獣人とは分かり合えるということは、レオニア様と話してわかっていたし、私はこの提案を受け入れるべきだと思ったのだ。
「……さて、そんなあなたに一つお願いしたいことがあるのです」
「はい、なんですか?」
「私とあなたは、お互いに愛し合っているということにしてもらいたいのです」
そこでレオニア様は、そのようなお願いをしてきた。
その言葉の意味は、なんとなく理解できた。恐らくそれは、獣人と人間の調和に繋がることなのだろう。
「アピールということですか?」
「ええ、端的に言ってしまえばそういうことになります。契約によって婚約しているということでは、和平の証としては少々弱いですからね……」
「確かに、そうですね。種族を越えた愛というものを表現する必要があるという訳ですか」
レオニア様の提案は、かなり大事な要素であるだろう。
契約による婚約と愛し合っての婚約とでは、印象は異なってくる。二つの種族の和平のためには、後者の方が効果的であるだろう。
「でも当然、事情を邪推する人もいますよね……そういう人達も含めて納得させるためには、私とレオニア様が仲が良い様を直接見せる必要がありますか」
「そうしていただけると、こちらとしてはありがたいですね。少々恥ずかしいですが……フェリティア嬢としては、大丈夫なのですか?」
「まあ、恥ずかしさはありますが、それも役目ですからね……」
人前でそういう様を見せるというのは、中々に恥ずかしいことだ。
いやそもそもの話、レオニア様とそんな風に接するというのにも恥ずかしさがある。
本当にそんなことができるのだろうか。私は少々、不安になってきた。
「でも少し練習しておきませんか? いきなりできることではないでしょうし……」
「そうですか?」
「ええ、少しそちらに行かせてもらいますね」
とりあえず私は、対面していたレオニア様の横に腰掛けてみることにした。
今後のために、彼と触れ合うことに慣れる。そのための行動を私は開始するのだった。
15
お気に入りに追加
351
あなたにおすすめの小説
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
元悪徳領主の娘ですが、蛮族の国に嫁いで割と幸せにやってます
みなかみしょう
恋愛
ルルシア・グランフレシアの実家は、悪徳領主である。
とても悪い領主なので、ある日突然、世間から断罪された。
それはもう、しっかりと。
両親の悪行に頭を悩ませていたルルシアは、学院でその報を聞き、絶望した。
「せめて卒業してから投獄してくださいまし!」
しかし、時計の針は止まらない。
目の前に突きつけられたのは、貴族令嬢の使用人か、蛮族と呼ばれる人々の住まう国へ嫁ぐこと。
彼女は思った。罪人の娘として暮らすより、他国へ嫁いだ方がマシでは?
そんな一縷の望みにかけて、ルルシアは嫁ぐことを選択する。
覚悟を決めて嫁いだ先で待っていたのは、思ったよりも、悪くない生活。
穏やかな夫と、静かな田舎の風景、それとちょっと厄介な出来事の数々。
「邪魔者扱いされないように、頑張らないとですわ!」
居場所を失った悪徳領主の娘が、居場所のために頑張る日々が始まった。
※だいたい三万字いかない程度で完結します。
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後
春野こもも
恋愛
王子に婚約破棄をしてもらおうと、婚約者の侯爵令嬢を罠に嵌めようとして失敗し、実家から勘当されたうえに追放された、とある男爵令嬢のその後のお話です。
『婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~』(全2話)の男爵令嬢のその後のお話……かもしれません。ですがこの短編のみでお読みいただいてもまったく問題ありません。
コメディ色が強いので、上記短編の世界観を壊したくない方はご覧にならないほうが賢明です(>_<)
なろうラジオ大賞用に1000文字以内のルールで執筆したものです。
ふわりとお読みください。
【完結】地味と連呼された侯爵令嬢は、華麗に王太子をざまぁする。
佐倉穂波
恋愛
夜会の最中、フレアは婚約者の王太子ダニエルに婚約破棄を言い渡された。さらに「地味」と連呼された上に、殺人未遂を犯したと断罪されてしまう。
しかし彼女は動じない。
何故なら彼女は──
*どうしようもない愚かな男を書きたい欲求に駆られて書いたお話です。
見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです
天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。
魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。
薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。
それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。
仕事ができないと王宮を追放されましたが、実は豊穣の加護で王国の財政を回していた私。王国の破滅が残念でなりません
新野乃花(大舟)
恋愛
ミリアは王国の財政を一任されていたものの、国王の無茶な要求を叶えられないことを理由に無能の烙印を押され、挙句王宮を追放されてしまう。…しかし、彼女は豊穣の加護を有しており、その力でかろうじて王国は財政的破綻を免れていた。…しかし彼女が王宮を去った今、ついに王国崩壊の時が着々と訪れつつあった…。
※カクヨムにも投稿しています!
※アルファポリスには以前、短いSSとして投稿していたものです!
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる