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1.独善的な婚約者

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 アルバラス王国は、獣人の国と呼ばれている。
 その国では、獣人と呼ばれる獣と人の特徴を併せ持つ種族が暮らしているのだ。

 彼ら獣人と人間は、相容れない存在である。ほんの数十年前まで、多くの人達がそのような考えを持っていた。
 しかし時代が進んで行くにつれて、獣人達に対する考えは変わっていった。彼らは、人間にも友好的な種族であったのだ。

 多くの国がアルバラス王国が友好的な関係を結ぶ中で、私の祖国であるレピオニア王国も隣国である獣人の国と同盟を結んだ。
 ただそれでもまだ多くの人達の中には、獣人に対する根強い差別意識が残っていた。彼らを野蛮な種族だと思っている人間が、残念ながらこの国には未だにいるのだ。

「獣人、野蛮な種族だ……まったく、父上も何を考えているのやら」
「……」

 私の婚約者であるランバス様も、そんな差別主義者の一人であった。
 彼は、独善的な性格をしている。この国の第二王子でありながら、王族としての意識の欠片も持っていない彼は、私に対して獣人に対する愚痴を口にしていた。
 この国を引っ張っていくべき存在である彼が、そのような態度であるという事実は、悲しむべきことであるだろう。本来であれば、彼が最初に意識を改めるべきであるというのに。

「ランバス様、お言葉ですがそのようなことを口にするのはやめておいた方がいいですよ?」
「なんだと?」
「あなたが、心の底でどのようなことを考えているのかは知りませんが、少なくともそれは口に出すべきことではないでしょう」

 そこで私は、ランバス様に少し釘を刺しておくことにした。
 最近の彼の行動は、目に余る。婚約者として、私は彼を止めるべきだろう。
 そう思って言葉を口にしたのだが、それに対してランバス様は不満を露わにしていた。滅多に逆らうことがなかった私が、急に反論をしたことを不快に思ったのかもしれない。

「フェリティア、お前僕に逆らうのか?」
「別に逆らっているつもりはありませんが……」
「僕は事実を口にしているというだけだ。獣人は野蛮な種族だ。この国では誰もがそう思っている。同盟を結んだ父上がおかしいのだ。あんな国は、滅ぼしてしまえばいいというのに……」
「隣国とことを荒立てる方が余程愚かだと思いますが……」
「……どうやら僕の言うことが、気に入らないようだな?」

 私の言葉に、ランバス様は逐一不快そうにしていた。
 前々から思っていたことではあるが、彼は自分の考えが正しいと信じ込む傾向がある。今回もその悪い癖が、出てしまっているようだ。
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