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私とレイグスは、故郷であるベンドの近くにある野原にいた。
ここは、結界の範囲内であるため、魔物が寄り付かない安全な場所だ。遮るものもないため、風がよく通り、とても気持ちいい場所である。
そんな野原の真ん中で、私達は寝転がっていた。最近は色々とあったため、ここで体を休めているのだ。
「……結局、俺は今回の事件で、碌に役に立たなかったな……」
「それは、私も同じだよ?」
「お前は、魔法を使って、色々とやっていたじゃないか。俺は、本当に何もしていないぜ?」
「でも、それはヘルゼン様の部下でもできただろうし、何もしていないのと一緒ではないかな?」
太陽の光と温かい風を浴びながら、私達は話をしていた。
レイグスは、あの事件で活躍できなかったことを気にしていた。だが、それは私も同じである。
あの事件は、ヘルゼン様が解決してくれたのだ。私達は、特に何もしていない。
「そもそも、レイグスは私と違って、魔術師達と関わりもなかったし、活躍できないのも仕方なかったと思うよ。私なんて、部下だった人をまったく説得できなかったんだから、すごくひどいよ?」
「いや、それは……もうやめるか。こんなことを話しても、どうしようもないな」
私の言葉で、レイグスはこの話を切り上げた。
自分から持ち掛けた話だが、あまりいいものではないと気づいてくれたようだ。
「それより、お前は聖女に戻らなくてよかったのか? ヘルゼン様も部下達も望んでいただろう? 今は、もうビクトンもいないし、丁度よかったんじゃないのか?」
「それは……」
そこで、レイグスはその話をしてきた。
事件が解決した後、私は聖女に戻らないかと持ち掛けられた。だが、私はそれを断ったのだ。
その理由は、色々とある。しかし、その一番の理由はレイグスに少し話しにくいものだ。
いや、レイグスだけではない。こんな理由で聖女を断ったなど、誰にも知られてはいけないことである。他の理由もあるので取り繕えない訳ではないと思うが、どちらにしても心証がよくないだろう。
「そんなことより、レイグスは最近どうなの? 家を継ぐ準備は、しっかりとできているの?」
「それは……色々と、考えている」
「うん? なんだか、おかしな反応だね?」
「お前の方こそ、俺の質問をはぐらかしただろう?」
「まあ、そうなんだけど……」
話を変えようとした私の質問に、レイグスは答えてくれなかった。
しかし、それは私も同じなので、これ以上何か言える訳ではない。
「……そろそろ、戻るか。大分、体も休まったしな?」
「……そうだね」
私達は、ゆっくりと立ち上がった。
大分休んだので、体の疲れがかなりとれている。この場所は、本当に癒される場所だ。
私達は、ゆっくりと歩いて行く。
聖女であった私だが、本当の居場所はここなのだろう。
そんなことを思いながら、私は今日も穏やかな日常を送るのだった。
ここは、結界の範囲内であるため、魔物が寄り付かない安全な場所だ。遮るものもないため、風がよく通り、とても気持ちいい場所である。
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「それは、私も同じだよ?」
「お前は、魔法を使って、色々とやっていたじゃないか。俺は、本当に何もしていないぜ?」
「でも、それはヘルゼン様の部下でもできただろうし、何もしていないのと一緒ではないかな?」
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あの事件は、ヘルゼン様が解決してくれたのだ。私達は、特に何もしていない。
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「いや、それは……もうやめるか。こんなことを話しても、どうしようもないな」
私の言葉で、レイグスはこの話を切り上げた。
自分から持ち掛けた話だが、あまりいいものではないと気づいてくれたようだ。
「それより、お前は聖女に戻らなくてよかったのか? ヘルゼン様も部下達も望んでいただろう? 今は、もうビクトンもいないし、丁度よかったんじゃないのか?」
「それは……」
そこで、レイグスはその話をしてきた。
事件が解決した後、私は聖女に戻らないかと持ち掛けられた。だが、私はそれを断ったのだ。
その理由は、色々とある。しかし、その一番の理由はレイグスに少し話しにくいものだ。
いや、レイグスだけではない。こんな理由で聖女を断ったなど、誰にも知られてはいけないことである。他の理由もあるので取り繕えない訳ではないと思うが、どちらにしても心証がよくないだろう。
「そんなことより、レイグスは最近どうなの? 家を継ぐ準備は、しっかりとできているの?」
「それは……色々と、考えている」
「うん? なんだか、おかしな反応だね?」
「お前の方こそ、俺の質問をはぐらかしただろう?」
「まあ、そうなんだけど……」
話を変えようとした私の質問に、レイグスは答えてくれなかった。
しかし、それは私も同じなので、これ以上何か言える訳ではない。
「……そろそろ、戻るか。大分、体も休まったしな?」
「……そうだね」
私達は、ゆっくりと立ち上がった。
大分休んだので、体の疲れがかなりとれている。この場所は、本当に癒される場所だ。
私達は、ゆっくりと歩いて行く。
聖女であった私だが、本当の居場所はここなのだろう。
そんなことを思いながら、私は今日も穏やかな日常を送るのだった。
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