聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私達は、王都まで近づいて来ていた。
 そこで、明らかに様子が違うことに気づく。

「なんというか、周りが静かだな……」
「うん、明らかにおかしいよね……」

 王都というものは、人の出入りが激しい場所である。
 普通に考えれば、門の周りでは多くの人々が行き来しているはずだ。
 それなのに、遠くに見える門には誰もいない。明らかに異様な雰囲気が、王都から漂っているのだ。

「どうやら、色々と遅かったようですね……」
「ヘルゼン様?」
「恐らく、来ますよ……」
「え? ああっ!?」

 ヘルゼン様の言葉とともに、馬車は急停止した。
 それは、何かの力によって無理やり止められたという感じである。
 その感覚を、私は知っていた。これは、魔法によって起こされた現象なのだ。

「アルメア、大丈夫か?」
「うん、問題ないよ……」

 急停止して倒れかけた私を、レイグスは支えてくれた。
 それにより、私は周りを探索することに集中できる。魔力の出所を探るのだ。

「見つけた……」
「アルメア? どうした?」
「レイグス、戸を開けて!」
「あ、ああっ……」

 レイグスが戸を開けると同時に、私は馬車の外に飛び出した。
 そのまま、私は魔力を集中させる。その狙いは、王都に向かう街道を囲む森の中にいる魔術師達だ。

「うあっ……」
「きゃあ……」

 直後に聞こえてきたのは、聞いたことがある声だった。
 私の元部下の魔術師達の声に、よく似ているのだ。私は、ゆっくりと森の中にいる魔術師達をこちら側に引き寄せていく。

「やっぱり……」

 気絶した二人は、私の顔見知りだった。
 どうやら、私の予測は当たってしまっていたようだ。

「アルメア、そいつらは……」
「私の部下だった人達だよ」
「ということは……」
「うん、本当に何かしているみたい……」

 私に続いて、レイグスとヘルゼン様が外に出てきた。
 二人とも、私の言葉に顔を歪めている。この事実を、悲しんでくれているのだろう。

「現状は理解できました。最悪な事実になっていなければいいのですが……」
「最悪な事実……? 今より悪い状況があるというのですか?」
「弟の命が、奪われている場合のことを考えているのです。ここまででも充分大罪ですが、そんなことをすれば、ただでは済みませんからね」
「そうならないことを、願うしかないという訳ですか……」

 二人の会話を聞きながら、私は周囲を探っていた。
 今の所、この二人以外の魔力は感じられない。恐らく、二人だけでここに来る者を襲撃して人が王都に入るのを防いでいたのだろう。
 その二人が倒れたことは、向こうもわかっているはずだ。いずれ、援軍が来るだろう。これは、早く行動を起こした方がいいかもしれない。
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