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 私は、第二王子のヘルゼン様に、この国に起ころうとしていることについて話していた。
 
「なるほど、中々、深刻な事態になっているようですね……」
「ええ、そうなのです」

 全てを聞き終えて、ヘルゼン様はかなり険しい表情になっていた。
 それは、身内の不甲斐なさに怒っているからかもしれない。

「あなたにも、ご迷惑をおかけしたみたいですね。愚弟の行いは、必ず私が裁きましょう」
「ありがとうございます」

 ここでヘルゼン様と会えたのは、とても幸運なことだった。
 彼に話を通しておけば、国王様にも繋がる。そうすれば、ビクトンの悪事が明るみに出るのだ。
 とりあえず、彼を止めるという当初の目的は、これで完了したも同然である。偶然の出会いが、解決に繋がったのは、本当に嬉しい誤算だ。

「問題は、あなたの部下が何かをしようとしているという方ですか……」
「ええ、それは私の予測でしかありませんが……」
「いえ、極めて可能性は高いでしょうね。この町にいるのが部下の親族であるというなら、とても納得できます」

 問題は、もう一つあった。
 それは、私の元部下達が何かしようとしているということだ。
 ただ、それは私の推測に過ぎない。実際に起こるかどうか、定かではないことである。
 最も、その可能性はとても高いだろう。そうでなければ、この町にここまで部下の家族が来るはずがないからだ。

「とにかく、真相を確かめるためには、王都に戻るしかありませんね……私が行って、ビクトンを裁くと伝えれば、その暴走も止まるでしょう。何もないなら、それはそれで構いません」
「ええ、急いでもらえますか?」
「もちろんです。ただ、僕達の馬は疲弊しています。今からこれ以上走らせるのは無理な話です」

 ヘルゼン様の言う通り、彼がビクトンを止めると知らせれば、彼等が起こそうとしている騒ぎは止められるだろう。
 そのために、彼には王都に急いでもらわなければならない。それに助力が必要なら、全力で行うだけだ。

「……私達の馬車に、乗ってください」
「ええ、そうしてもらえると助かります。という訳で、私は一足先に、王都に向かいます」
「王子、それは危険です」
「そうです。我々が同行するべきでしょう」
「……落ち着いてください。少し、話をしましょう」

 私の言葉を受けて、ヘルゼン様は兵士達と話をし始めた。
 第二王子である彼が、一人で王都に向かうことに、反対する者もいるようだ。
 それは、当然のことである。私やレイグスだけでは、王子を預けるには不安なのだろう。
 こうして、私達はヘルゼン様の話が終わるまで待機するのだった。
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