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二人で話している内に、時間はどんどんと過ぎていった。
その楽しい時間を過ごしている内に、私達は眠くなっていたようである。正直、いつ寝たかはあまり覚えていない。いつの間にか、寝ていて、気づいたら朝だったのだ。
「おはよう、レイグス」
「ああ、おはよう。俺達、いつ寝たんだ?」
「わからないけど、無事に眠れたから、良かったということでいいんじゃないかな?」
「まあ、そういうことにしておくか」
私とレイグスは、ゆっくりと起き上がった。
自然に眠れたからか、体がとても軽い気がする。しっかりと安眠できたということなのだろうか。
「さて、早く準備して出発しないといけないな……」
「うん、そうだね……あれ?」
「うん? どうかしたのか?」
窓から外を見て、私は少し驚いていた。
なぜなら、見たことがある人物がいたからだ。
しかし、その人物がここにいるはずはない。彼が、ここにいるなどあり得ないことなのだ。
「あれは……まさか?」
「うん……多分、ビクトンだと思う」
隣に来たレイグスも、窓の外にいる人物を見て驚いた。
その人物は、ビクトンである。私を散々苦しめた第三王子が、何故かこの町にいたのだ。
彼の周りには、兵士達もいる。そのことからも、彼が高い地位の人間であるということは明白だ。他人の空似という可能性もあるが、ビクトンの可能性が高いのではないだろうか。
「どうして、あの第三王子がこの町にいるんだ?」
「わからない……そんな必要性があるとは、まったく思えないんだけど……」
「王都で何かあったのか? お前が昨日予測していたようなことがあって、逃げて来たとか……」
「それにしては、落ち着きすぎていると思う。騒ぎがあって逃げて来たなら、あんなに兵士を連れているのもおかしいと思うし……」
ビクトンが、この町に用があるとは、非常に考えにくい。
王子が自ら出向くような用事など、滅多にないからだ。特に、ビクトンは部下に無茶を言って、自分は何もしないような人間である。
そんな彼が、このような町まで来るというのは、非常事態の時くらいだろう。だが、非常事態にしては、とても落ち着いている。どうも、それも違う気がするのだ。
「あっ……」
「うん? どうかしたのか?」
「レイグス、あれはビクトンではないかもしれない。他人の空似ではなくて、同じ顔の人間がもう一人いるんだ」
「もう一人……そうか!」
そこで、私はあることを思い出した。
彼は、ビクトンではない。あの愚かな王子と同じ顔をした王子。ビクトンの双子の兄であるヘルゼン様なのだ。
その楽しい時間を過ごしている内に、私達は眠くなっていたようである。正直、いつ寝たかはあまり覚えていない。いつの間にか、寝ていて、気づいたら朝だったのだ。
「おはよう、レイグス」
「ああ、おはよう。俺達、いつ寝たんだ?」
「わからないけど、無事に眠れたから、良かったということでいいんじゃないかな?」
「まあ、そういうことにしておくか」
私とレイグスは、ゆっくりと起き上がった。
自然に眠れたからか、体がとても軽い気がする。しっかりと安眠できたということなのだろうか。
「さて、早く準備して出発しないといけないな……」
「うん、そうだね……あれ?」
「うん? どうかしたのか?」
窓から外を見て、私は少し驚いていた。
なぜなら、見たことがある人物がいたからだ。
しかし、その人物がここにいるはずはない。彼が、ここにいるなどあり得ないことなのだ。
「あれは……まさか?」
「うん……多分、ビクトンだと思う」
隣に来たレイグスも、窓の外にいる人物を見て驚いた。
その人物は、ビクトンである。私を散々苦しめた第三王子が、何故かこの町にいたのだ。
彼の周りには、兵士達もいる。そのことからも、彼が高い地位の人間であるということは明白だ。他人の空似という可能性もあるが、ビクトンの可能性が高いのではないだろうか。
「どうして、あの第三王子がこの町にいるんだ?」
「わからない……そんな必要性があるとは、まったく思えないんだけど……」
「王都で何かあったのか? お前が昨日予測していたようなことがあって、逃げて来たとか……」
「それにしては、落ち着きすぎていると思う。騒ぎがあって逃げて来たなら、あんなに兵士を連れているのもおかしいと思うし……」
ビクトンが、この町に用があるとは、非常に考えにくい。
王子が自ら出向くような用事など、滅多にないからだ。特に、ビクトンは部下に無茶を言って、自分は何もしないような人間である。
そんな彼が、このような町まで来るというのは、非常事態の時くらいだろう。だが、非常事態にしては、とても落ち着いている。どうも、それも違う気がするのだ。
「あっ……」
「うん? どうかしたのか?」
「レイグス、あれはビクトンではないかもしれない。他人の空似ではなくて、同じ顔の人間がもう一人いるんだ」
「もう一人……そうか!」
そこで、私はあることを思い出した。
彼は、ビクトンではない。あの愚かな王子と同じ顔をした王子。ビクトンの双子の兄であるヘルゼン様なのだ。
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